E-journal GEO
Online ISSN : 1880-8107
ISSN-L : 1880-8107
調査報告
2020年農林業センサスにみられる沖縄農業の後退に関する考察
新井 祥穂
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 19 巻 1 号 p. 253-265

詳細
抄録

2020年農林業センサスは,農業の基本的要素(経営耕地面積,農業経営体,農業労働力)が,全国で激しく減少したことを示した.この状況は,農地集積主体が形成されなければ,農業の後退を招く.本稿は,基本的要素の減少が目立つ沖縄農業が,後退局面にあるかを判断することを目的に,沖縄農業の長期的変化を本島部と離島部とに分けて分析した.その結果,従来から農業の縮小が指摘されてきた本島部のみならず,復帰後の沖縄農業の拠点となっていた離島部においても,基本的要素における減少が示された.農業構造をみても,上層経営体の成長が顕著ではなく,沖縄農業は後退局面にあることが確認された.これは,多くの農業労働力を抱える世代が農業からの引退時期にさしかかった構造的な要因と,2010年代半ば以降の好況局面に作用された労働市場の逼迫が,関係していると思われる.

著者関連情報
© 2024 公益社団法人 日本地理学会
前の記事
feedback
Top