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提言
山間集落の現局面と山村政策への視点
西野 寿章
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2010 年 4 巻 2 号 p. 86-102

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抄録

本稿は,過疎化によって高齢化の進展が著しい山間集落の現状について,主に群馬県における実態調査を通して考察し,山村政策への視点を考察するものである.日本の山村は,都市と農山村の地域格差が拡大した高度経済成長期に若年層を中心として,著しい人口減少を経験した.その背景には,都市における重化学工業を中心とした経済成長と,山村における製炭,養蚕の衰退があったが,林業がまだ山村を支えていた.しかし木材価格の高騰を要因として1964年に木材の輸入自由化が進められると,瞬く間に外材が日本市場を席巻し,国産材価格は1980年をピークに下降の一途をたどった.一時的に先端技術産業やリゾート開発によって,山村にも光が差したように思えたが,今日の山村は経済的基盤を失い,若年層人口は定住動機を見出せず,多くの山間集落では高齢化が進み,このままいけば集落の自然消滅が頻発する可能性が高い.高齢化の進んだ現状から,政府は集落支援員による新たな過疎対策に乗り出し始めた.しかし,産業論的アプローチを欠いた過疎対策が山間集落問題を改善できるとは思えず,山村の持続性を形成するには,山村に固有な農業,林業の振興に取り組むことが必要である.

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© 2010 公益社団法人 日本地理学会
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