E-journal GEO
Online ISSN : 1880-8107
ISSN-L : 1880-8107
調査報告
カンボジア,メコン川下流平野における2011年洪水と河川微地形
南雲 直子久保 純子
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 8 巻 1 号 p. 141-152

詳細
抄録

2011年8月~10月に大規模洪水が発生したカンボジアのメコン川下流平野を対象とし,首都プノンペンを中心とした地域で洪水と微地形に関する調査を行った.衛星画像を用いて浸水範囲を把握し,水文データ等を入手するとともに,2012年3月の現地調査では洪水痕跡より浸水深を測定した.その結果,微地形と浸水範囲・浸水深の対応が良好に見られた.洪水はメコン川の氾濫原を利用して流下するとともに,トンレサップ川沿いでは深く湛水し,通常の雨季には浸水することのない高位沖積面にまで洪水が達した.これは近年最大規模といわれた2000年洪水に匹敵する規模であった.また,浸水域に比較すると相対的な被害は大きくなかった.カンボジアのメコン川はほとんど築堤が行われておらず,伝統的な地域に住む人々は毎年の洪水を経験しながらも,その環境に適応し,洪水リスクを最小限にするような土地利用や生活様式を続けている.

著者関連情報
© 2013 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top