抄録
健康上の危険因子を探る伝統的な研究において,健康や病気は個人の問題としてとらえられてきた.しかし,個人を取り巻く環境,特に近隣の物的・社会的環境が,人々の健康にさまざまな影響を与えることも明らかにされつつある.本稿では,この近隣と健康をめぐる近年の研究動向を整理し,現状と課題について解説することを目的とする.特に,食と身体活動に焦点を当てて近隣の健康影響に関する研究を概観するとともに,近隣環境の測定に関する諸問題について議論する.その上で,近隣環境の多様性を考慮して,日本を対象とした実証研究の展開が必要であることを指摘する.