2013 年 8 巻 2 号 p. 208-222
中国の雲南省では,1990年代後半から農村地域における観光地化が著しく進んだ.しかし,外部資本により観光施設が建設され,観光地化が地域住民の所得向上や地域社会の発展に寄与していない事例も存在するため,地域住民による内発的で自律的な観光施設の運営を実現し,観光収入が農民の所得水準の向上に着実に結びつくような経営を行ってゆくことが大きな課題となっている.本稿では,納西族の農民により観光乗馬施設の自律的な共同経営が行われている雲南省北西部の拉市海周辺地域を対象として,その形成プロセスと共同経営の実態について調査した.その結果,平等な収益分配,投票によるリーダーの選出など,きわめて民主的な観光乗馬施設の運営が行われ,地元住民の所得向上にも貢献していることが明らかとなった.