抄録
本稿の目的は,フランスのクラスター政策である「競争力の極」政策について,成立の経緯,地域指定の仕方,産業分野・地理的分布等の特徴を明らかにするとともに,「国際的な極」7地域を取り上げ,いかなる企業間関係と政府間関係の下で,国際競争力の強化が目指されているのかを検討することにある.フランスでは,国際競争力の低下を克服することが重要な課題とされ,これまでの地方分散政策や中小企業支援策に代わり,大企業や大学の役割を重視した「競争力の極」政策が打ち出されてきた.この政策では71の極が,3つのカテゴリーに分けられて指定された.産業分野では,輸送機械製造業が多く,地理的分布においてもパリやリヨンなど,既存の産業集積地域が指定されるといった特徴が見られた.「国際的な極」には7地域が指定されたが,パリに多くが集中するとともに,バイオやICTなどの先端産業の強化が意図されていた.地域圏の役割は重要であるが,地域圏間の連携やパリの多国籍企業との連携など域外との関係も重視され,また中央政府からの支援も重点的に行うことによって,国際競争力の強化が目指されている.