2014 年 9 巻 2 号 p. 159-171
本論文の目的は,韓国のクラスター政策を概観し,ソウルデジタル産業団地と板橋テクノバレーを事例に,首都圏地域におけるクラスターの変化を検討することにある.韓国のクラスター政策は,2000年代初頭の盧武鉉政権の登場とともに,「産業団地イノベーションクラスター事業」を中心に全国レベルで推進された.当事業の目的は,R&Dの成果とネットワーク活動の向上により,単純な工場集積地であった既存の産業団地を,イノベーティブなクラスターに格上げすることにあった.ソウルデジタル産業団地は,かつて韓国経済の離陸に寄与した初期の工業団地であったが,1990年代後半からの産業再構築の結果,サービス業中心のイノベーションクラスターに変貌した.板橋テクノバレーは,2010年からIT主要企業・機関の集積が始動した新興クラスターである.2000年代初頭以降,既存の産業団地をクラスターに格上げする投資は継続されているが,創造性を伴ったイノベーションの時代の幕開けとともに,クラスター政策も新たな方向性が求められている.