学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
症例報告
急性肝障害と低血糖に低インスリン血症を伴った飢餓状態の3例
畦地 英全長嶋 一昭菊地 三弥内藤 玲服部 武志筒井 未季田畑 直子平石 宏行松谷 泰男
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2019 年 1 巻 3 号 p. 199-205

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抄録

神経性食思不振症における急性肝障害や低血糖は多く報告されているが,高齢者の飢餓状態でも同様の症例が報告されている.飢餓状態の急性肝障害は低血糖を防ぐための肝臓でのオートファジー(自食作用)が原因である.オートファジーとは,細胞内の不要なタンパク質を排除し,その恒常性を保つために必要不可欠な現象であるが,飢餓状態では糖新生のために肝細胞のオートファジーを起こしている.低インスリン,低アミノ酸,グルコース欠乏がオートファジーを誘導する.治療は栄養療法であるが,高度な低血糖を伴うことが多く,リフィーディング症候群に注意を行いつつ,早期から慎重かつ十分な栄養療法を行うことが推奨される.今回,我々は半年間で認知症患者,精神疾患患者に,急性肝障害と低血糖に低インスリン血症を伴った飢餓状態の3症例を経験した.今後,超高齢化社会において同様な患者の増加が懸念されるため文献的考察を加え報告する.

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© 2019 一般社団法人日本臨床栄養代謝学会
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