2021 年 3 巻 3 号 p. 201-206
【はじめに】左上大静脈遺残(以下,PLSVCと略)は偶然発見されることが多い血管異常である.今回,PLSVCを有する患者へPICC留置を行った症例を報告する.【症例】86歳女性.胃がんの術前栄養強化目的で左上腕からPICCを挿入した.ガイドワイヤーを透視下で進め,縦隔の左側を走行したため,以前に撮影したCTで血管を確認したところ,PLSVCがあることがわかった.そのため,冠状静脈洞と右心房の接合部にカテーテル先端が位置するよう留置した.PICC挿入後のCTにて,カテーテル先端は右心房内に位置していたが,入院経過で合併症はみられなかった.【考察】PLSVCに対するPICCの留置は,PLSVCが右心房に流入する限り禁忌ではないが,PICC先端の理想的な位置に関する報告はない.PLSVCは冠状静脈洞を通して右心房に流入することが多く,冠状静脈洞内での留置は合併症を引き起こす可能性がある.本症例におけるカテーテル先端は右心房内に留置され,明らかな合併症は認められなかったが,適切なカテーテル先端位置については今後検討が必要である.