学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
原著
重症心身障害児に対する腹腔鏡下噴門形成術の術後管理における経鼻空腸カテーテルの有用性
髙澤 慎也西 明
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2022 年 4 巻 3 号 p. 111-116

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Abstract

【目的】重症心身障害児の胃食道逆流症に対する腹腔鏡下噴門形成術では術後の胃排泄遅延などの合併症が多く見られる.そこで,術後管理における経鼻空腸カテーテル(以下,NJCと略)の有用性を後方視的に検討した.

【対象および方法】2008年から2018年までの期間に当院において腹腔鏡下噴門形成術を施行した症例を後方視的にNJCの有無で2群に分け,背景,術後経過,合併症について比較した.

【結果】NJC有り群が27例,NJC無し群が13例であった.注入開始はNJC有り群が1.0 ± 0.4日で,NJC無し群の2.7 ± 2.6日より早かった.full feedingまでの日数は,NJC有り群が6.1 ± 2.1日,NJC無し群の12 ± 6.5日より早かった.合併症の発生率は,NJC有り群が5例(18%)で,NJC無し群の7例(54%)より少なかった.

【結論】NJCの使用により,早期注入再開,早期のfull feeding達成,術後合併症の低減が認められた.

Translated Abstract

Purpose: Laparoscopic fundoplication is widely performed for gastroesophageal reflux disease in children with neurological impairment, but postoperative nutritional management may be difficult due to delayed gastric emptying. Therefore, we retrospectively examined the usefulness of a naso-jejunal feeding catheter (NJC) in postoperative management.

Methods: Patients with neurological impairment who underwent laparoscopic fundoplication at our hospital between 2008 and 2018 were divided into two groups based on the presence or absence of use of a NJC. Patient characteristics, nutritional status, postoperative course, and complications were compared in these groups.

Results: Laparoscopic fundoplication was performed with a NJC in 27 patients and without a NJC in 13 patients. The NJC group had a significantly earlier start of enteral feeding (1.0 ± 0.4 vs. 2.7 ± 2.6 days, p = 0.002) and earlier establishment of full enteral feeding (6.1 ± 2.1 vs. 12 ± 6.5 days, p = 0.0002). The rate of perioperative complications was also significantly lower in the NJC group (5/27 (18.5%) vs. 7/13 (53.8%), p = 0.03).

Conclusions: NJC placement in patients with neurological impairment who underwent laparoscopic fundoplication resulted in an earlier start of enteral feeding, earlier establishment of full enteral feeding, and reduction of postoperative complications.

目的

重症心身障害児では,長期臥床,筋緊張の亢進,側弯など様々な原因によって胃食道逆流症を呈する症例が多い.治療としては,保存的治療がまず選択され,半固形栄養剤やとろみ剤の使用および,ファモチジン,ランソプラゾールなどの制酸剤やモサプリドクエン酸塩水和物,漢方薬などの薬物療法が行われる.これらの効果が乏しい場合や,胃食道逆流現象による誤嚥性肺炎のリスクが高い場合は,経鼻空腸カテーテル(naso-jejunal feeding catheter;以下,NJCと略)を用いた持続的な経腸栄養を行う場合もある.この場合,胃から食道への逆流は著明に減少するが,ポンプによる長時間の管理が必要で在宅ケアが難しい,事故抜去時の再挿入が困難といったデメリットも存在する.これらの保存治療では対応困難な場合が,手術治療の良い適応とされる.

胃食道逆流症の手術治療としては,噴門形成術が一般的に行われる.特に腹腔鏡下噴門形成術は開腹手術と比較して,術後の経管栄養確立が早く,術後在院期間も短いと報告1)されており,当院でも腹腔鏡を第一選択としている.しかし,患児が重症心身障害児である場合,術後の胃排泄遅延などにより術後の栄養管理に難渋することが少なくない.Poolaらは,小児の噴門形成術後の症例230例のうち,18%が胃排泄遅延などのため長期間NJCからの栄養が必要であり,特に重症心身障害児にその傾向が強かったと報告している2).また,重症心身障害児では抗てんかん薬などを内服している児も多いため,術後に内服薬が投与できない期間があると,その間の投薬をどうするかも重要な問題である.

噴門形成術の術後管理において,前述の問題を解決する手段としてNJCの使用が有効である可能性がある.胃食道逆流症の患児では,術前からNJCを留置して栄養を行っている場合があり,その場合は術後早期から経腸栄養を開始することができ,また内服薬も早期から再開できる可能性がある.しかし,外来通院患者など,NJCが管理困難なため使用していなかった症例では,術後は胃からの排液量などを観察しながら,個々の状態に応じて経胃的に栄養剤や内服薬を投与する必要がある.

また,術後にNJCから栄養投与を行うことで,近年注目されている術後早期経腸栄養が可能となり,その恩恵を享受することができるかもしれない.メタアナリシス研究によると,消化管手術後に早期から積極的に経腸栄養を行うことで,感染性合併症が減少し,術後在院日数を短縮するとされている3,4).本邦でも胃がん手術後の早期経腸栄養によって,術後肺炎の減少5)や,術後体重減少の抑制6)といった効果が報告されている.重症心身障害児の腹腔鏡下噴門形成術については,学会報告ではあるが,早期経腸栄養による術後体重減少の抑制や感染性合併症の防止効果が報告されている7)

こうした背景もあり,当院では重症心身障害児の腹腔鏡下噴門形成術の術後管理にNJCを使用し,術後早期経腸栄養や早期の投薬再開を積極的に行っており,今回その有用性を後方視的に検討した.

対象および方法

本研究は群馬県立小児医療センター倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:GCMC2019-101).

2008年3月から2018年7月までに,当院にて胃食道逆流症を呈する重症心身障害児に対して腹腔鏡下噴門形成術を実施した症例を対象とした.胃食道逆流症は術前の嘔吐症状や誤嚥性肺炎の既往,上部消化管透視検査による胃食道逆流現象,24時間pHモニタリング検査における逆流時間4%以上,等の所見を参考として主治医が総合的に判断して診断した.

術前からNJCを使用して経腸栄養を行っている児については,術後もNJCをそのまま残して,栄養や薬剤投与に使用した.手術決定時にはNJCを使用していなかった児についても,術前の栄養状態の改善や,経胃的な栄養に起因する誤嚥性肺炎の予防,術後の早期経腸栄養といった目的で主治医が必要と判断すれば,術前に透視下でNJCを留置した.診療科内に,どのような症例にNJCを術前留置するかといった統一した基準は無く,個々の主治医が判断した.

手術は基本的に5ポートの腹腔鏡下手術により実施された.噴門形成はNissen法で行い,ラップは緩めに巻き,長さは2 cm程度とした.胃瘻造設の希望がある症例では,噴門形成後に左上腹部のポート創を3 cm程度延長し,同部位に胃瘻造設を行った.本研究では腹腔鏡で噴門形成を完遂した症例のみを対象とし,胃瘻造設目的以外での開腹移行症例は除外した.

術後にNJCの使用を再開するタイミングは主治医の判断で行った.経胃投与を始めるタイミングは胃瘻や経鼻胃管からの排液減少が確認できた時点とした.NJCを使用している場合は,NJCのみでfull feedingとしてその後胃瘻に移行する症例と,NJCからの投与量はある段階で留めて早期に胃瘻からの注入を開始する症例があった.いずれを選択するかは,個々の症例の胃からの排液量の変化に応じて,主治医が判断した.

カルテを後方視的に調査し,対象症例を,手術前にNJCが留置されていた群(NJC有り群)と手術前にNJCが留置されていなかった群(NJC無し群)の2群に分けた.調査項目として,手術時月齢,手術時身長,手術時体重,手術時BMI,Waterlowの分類におけるWeight for HeightおよびHeight for Age,原疾患,術前血清アルブミン値,術前末梢血リンパ球数,経口摂取の有無,気道処置や胃瘻造設術の既往もしくは同時手術の有無,手術時間,術中出血量,手術日から内服薬注入開始までにかかった日数,手術日からNJCを用いたfull feedingまでにかかった日数,手術日から経胃的なfull feedingまでにかかった日数,術後在院日数,術後2週および4週の体重変化,術後合併症とその内訳について,両群間で比較を行った.Waterlowの分類におけるWeight for HeightおよびHeight for Ageの算出には,田中ら8)の報告した「2000年日本人小児の体格標準値」における「性別・身長別標準体重(表3)」,および「平均身長(表1)」を使用した.術後在院期間については,術後に当科に入院していた日数を用いた.退院の条件としては,①全身状態が良好で,②経腸栄養が確立されていること,③創部の状態が良好なこと,④術後合併症があった場合は適切に治療されていること,とした.また,術前より他科で長期入院中であった患児については,上記条件を満たした後にもとの診療科に転科となるまでの日数を用いた.

結果は平均 ± 標準偏差で示した.統計処理はStudentのt検定,およびフィッシャーの正確確率検定を適宜用い,有意水準は0.05とした.

結果

腹腔鏡下噴門形成術を実施した症例はのべ40例であり,NJCを留置した群(NJC有り群)が27例,留置しなかった群(NJC無し群)が13例であった.各群の症例の背景および術前の栄養指標を表1に示した.いずれの項目も両群間で有意差を認めなかった.

表1. NJC有り群とNJC無し群との患者背景の比較
NJC有り群(n = 27) NJC無し群(n = 13)
手術時年齢(歳) 9.1 ± 8.0 14.4 ± 11.1
性別(男/女) 16/11 8/5
身長(cm) 107 ± 26 117 ± 26
体重(kg) 16.6 ± 7.8 18.0 ± 6.2
BMI 14.3 ± 3.2 13.1 ± 2.1
Waterlowの分類
 Weight for Height(%) 88.8 ± 19.3 80.2 ± 14.7
 Height for Age(%) 88.7 ± 10.1 85.6 ± 6.6
血清アルブミン値(g/dL) 3.9 ± 0.4 3.9 ± 0.3
末梢総リンパ球数(103/μL) 2.9 ± 1.4 3.0 ± 1.1
原疾患
 胎児仮死 6 4
 染色体異常 6 2
 先天奇形症候群 7 1
 神経筋疾患・てんかん 4 2
 脳炎・髄膜炎後 2 2
 その他 2 2
 経口摂取が可能な症例 4(15%) 5(38%)
気道処置・胃瘻の有無(同時手術)
 気管切開 5(0) 1(1)
 喉頭気管分離 2(1) 0(0)
 胃瘻 26(23) 13(10)

両群間における患者背景,および術前の栄養指標(体重,BMI,Waterlowの分類,血清アルブミン値,末梢総リンパ球数)を示す.いずれの項目においても,有意な違いはなかった.気道処置および胃瘻について,手術既往および今回の同時手術の総数を記載し,( )内に今回の同時手術件数を記載した.

NJC:naso-jejunal feeding catheter,BMI:body mass index

手術中および手術後の経過,術後の体重変化,周術期合併症について表2に示した.術後の内服薬注入開始時期は,NJC有り群(1.0 ± 0.4日)がNJC無し群(2.7 ± 2.6日)より有意に早かった(p = 0.002).なお,内服薬注入開始時の投与経路は,NJC有り群では全例がNJCから,NJC無し群では全例が胃瘻からであった.NJC使用も含めたfull feedingまでの日数は,NJC有り群(6.1 ± 2.1日)がNJC無し群(12 ± 6.5日)より有意に早かった(p = 0.0002).全合併症の発生率は,NJC有り群(27例中5例)がNJC無し群(13例中7例)より有意に低かった(p = 0.03).術後の体重変化は,NJC無し群で体重減少が多い傾向にあったが,有意差は認めなかった.

表2. NJC有り群とNJC無し群との術中および術後経過の比較
NJC有り群(n = 27) NJC無し群(n = 13)
手術時間(分) 222 ± 70 225 ± 59
出血量(mL) 16 ± 23 8.2 ± 13
内服薬注入開始時期(日) 1.0 ± 0.4 * 2.7 ± 2.6
full feedingまでの期間(日) 6.1 ± 2.1 * 12 ± 6.5
経胃的full feedingまでの期間(日) 10.0 ± 4.1 11.8 ± 6.5
術後在院期間(日) 18.2 ± 11.3 20.1 ± 10.4
術後2週間目の体重変化率(%) +0.07 ± 4.4 –2.4 ± 4.3
術後4週間目の体重変化率(%) +3.3 ± 4.5 +0.5 ± 7.6
合併症の発生数(発生率%) 5(19%)* 7(54%)

両群間における手術成績および術後経過,術後合併症について示す.

full feedingまでの期間:手術日から,NJCを使用した状態で経腸栄養が十分量となるまでにかかった日数,経胃的full feedingまでの期間:手術日から,NJCを使用せず経腸栄養が十分量となるまでにかかった日数(NJCを留置したまま退院した児は除外),体重変化率:100 × 術後体重(kg)/術前体重(kg),*:p値 < 0.05

NJC:naso-jejunal feeding catheter

full feedingまでに時間がかかった理由を検討するために,術後合併症の内訳と,それぞれの症例の経胃的full feedingまでの期間との関係について表3に示した.胃排泄遅延や肺炎の発生は,経胃的な投与をいったん止めざるを得ないため,full feedingまでに時間がかかる原因となっていた.胃排泄遅延を呈した3例のうち,2例は胃瘻造設術を併施しており,1例は術前から胃瘻のあった症例であった.また,2例では著明な胃排泄遅延のため,術後数日経過してからNJCを挿入しての栄養管理を要した.

表3. NJC有り群とNJC無し群の術後合併症の内訳と経胃的full feedingまでの期間との関係
術後合併症の内訳 症例数 経胃的full feedingまでの期間(日)
NJC有り群(n = 27) 肺炎 3 14.5 ± 4.9
下部食道狭窄 1 16
下痢 1 8
NJC無し群(n = 13) 肺炎 1 12
不明熱 1 11
胃排泄遅延 3 17.5 ± 7.8
下痢 1 9
悪性症候群 1 28

両群における術後合併症の内訳と,それぞれの症例の経胃的full feedingまでの期間との関係について示した.

経胃的full feedingまでの期間:手術日から,NJCを使用せず経腸栄養が十分量となるまでにかかった日数(NJCを留置したまま退院した児は除外)

NJC:naso-jejunal feeding catheter

肺炎の合併率を含めその他の結果については,両群間で有意差を認めなかった.術後に肺炎を起こした4例について検討したところ,4例とも気道処置がされておらず,誤嚥性肺炎の既往がある症例や喉頭機能の低下を指摘されていた症例であった.

悪性症候群では全身状態の悪化のため,一時経腸栄養を止め,人工呼吸器管理となったため,回復までに時間がかかっている.

不明熱の症例は,発熱時にfull feedingにはなっておらず,点滴の糖濃度が8.5%で,脂肪製剤も併用していた.

考察

NJCを用いた群においては,ほぼすべての症例で術後1日目に内服薬が投与開始され,水分や栄養剤も順次注入されており,「術後24~36時間以内に経腸栄養を開始する」という術後早期経腸栄養の定義を満たしている.よって,術前からNJCを留置しておくことで,ほぼすべての症例で術後早期経腸栄養の実施が可能になると判断できる.

本研究では,両群間における薬剤の内服再開時期に有意差があった.この結果は,胃からの排泄が多いと経胃的に内服薬は再開できないとの主治医の判断が影響しており,本研究の限界と考えられた.主治医の判断を排除して,内服薬の早期再開がNJC留置のメリットであるかをより厳密に検証するには,前向き研究にてNJCからの内服薬早期投与と胃瘻からの内服薬早期投与を比較する必要がある.

NJC有り群で有意に早いfull feedingを達成できた点については,NJC無し群では術後の胃排泄遅延が存在し,full feeding達成まで期間を要したことを示唆している.個々の症例をみると,術後短期間のうちに胃瘻からの注入量を増やせた症例もいたが,2例では著明な胃排泄遅延のため,術後数日経過してからNJCを挿入しての栄養管理を要している.胃排泄遅延の原因として,胃瘻造設術の併施の関与も考えられたが,胃排泄遅延の3例のうち,2例が胃瘻併施,1例が以前より胃瘻があり,全体の割合と大きく変わらないことから,本研究においては両者の関連は指摘できなかった.

NJC有り群ではこのような胃排泄遅延の影響を回避し,full feedingを達成できたと考える.さらに,経腸栄養を早期に行うことで胃の運動を刺激し,術後の胃排泄遅延の発生自体を抑えることも予想されたが,経胃的なfull feeding達成までの期間に有意差は確認できず,この点に関しては今後の検討課題である.

本研究では,術後在院日数には有意差を認めなかった.理由としては,NJCからの栄養から胃瘻での栄養に切り替える際に日数を要したことと,重症心身障害児の多くは施設に入所しており,退院調整に日数がかかったことが原因と考える.今後,より早期の退院を目指すには,今回明らかになった術後経過をもとにして,クリニカルパスを導入する等の計画的な栄養管理および退院時期の設定が有効と考えられた.

本研究結果では,NJC有り群で合併症発生が抑えられており,これは術後早期に経腸栄養を開始し,full feedingを達成できたことにより,良好な栄養状態や腸内細菌叢を維持できたためと考える.重症心身障害児の噴門形成術後について,術前の栄養状態が悪い児で合併症発生が多いとの報告がある9).本研究では,術前のBMIやWaterlowの分類による比較では,両群間に差を認めなかった.また,術前の栄養指標である血清アルブミン値や末梢血リンパ球数は両群間で差は認めず,術前の栄養状態に大きな差は無かったと考えられ,合併症減少はNJCを利用した早期栄養再開による影響が大きいと考える.

術後の体重の変化をみると,有意差は無いものの,NJC有り群では体重減少がみられず,NJC無し群と比較して術後早期から栄養状態は良好であった可能性がある.この点においては,より症例数を増やした前向き研究による検討が必要と考えている.

また,一部の合併症は投薬の中断や点滴薬の長期使用が原因だった可能性が考えられる.悪性症候群をきたした症例では,もともと内服していた抗てんかん薬を中止して2日後に発症している.また,原因不明の発熱をきたした症例は,点滴の糖濃度が8.5%と比較的高く,脂肪製剤も併用していたことから,末梢点滴ラインの感染であった可能性がある.NJCを使用して早期にfull feedingを達成することで,静脈栄養を中止することができ,感染予防につながることが期待される.

中田らは,重症心身障害児の噴門形成術後において,早期経腸栄養群では感染性合併症は発生しなかった(0例/8例)と報告7)しているが,本研究ではNJC有り群27例中で術後肺炎が3例観察されており,NJC留置が誤嚥の原因となった可能性も示唆される.以前より重症心身障害児の噴門形成の周術期感染症の頻度は約50%と報告9,10)されており,特に感染リスクとなるのは気管切開や喉頭気管分離といった気道処置をされていないことや,緑膿菌やセラチアといった弱毒菌の鼻腔・咽頭への常在と報告11)されている.今回肺炎を起こした症例は,全例で気道処置がされておらず,誤嚥性肺炎の既往や喉頭機能の低下といった背景があり,誤嚥リスクが高い症例であったと考えられた.よって,①気管切開や喉頭気管分離といった気道処置が未施行,②誤嚥性肺炎の既往,③喉頭機能の低下,といったリスクがある症例に対しては,NJC留置は術後の誤嚥性肺炎を惹起する可能性があるため,留置のメリットが大きい場合に限り行うべきであろう.また,NJCを留置する場合も,長期間の留置を避ける,なるべく細径のカテーテルを用いるといった工夫が必要と思われる.また,術前の気道や鼻腔の常在菌の確認と周術期抗菌薬の適切な選択,口腔内の清潔も重要と考える.

結論

胃食道逆流症を呈する重症心身障害児に対する腹腔鏡下噴門形成術の術後栄養管理にNJCを用いることで,内服薬および経腸栄養の早期再開,早期のfull feedingの達成,術後合併症の低減といった効果が認められた.

 

本論文に関する著者の利益相反なし

 

本研究の一部は,第34回日本静脈経腸栄養学会学術集会(東京,日本),およびIPEG’s 28th Annual Congress for Endosurgery in Children(Santiago, Chile)で発表した.

引用文献
 
© 2022 一般社団法人日本臨床栄養代謝学会
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