学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
4 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
目次
原著
  • 髙澤 慎也, 西 明
    原稿種別: 原著
    2022 年 4 巻 3 号 p. 111-116
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/10
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    【目的】重症心身障害児の胃食道逆流症に対する腹腔鏡下噴門形成術では術後の胃排泄遅延などの合併症が多く見られる.そこで,術後管理における経鼻空腸カテーテル(以下,NJCと略)の有用性を後方視的に検討した.

    【対象および方法】2008年から2018年までの期間に当院において腹腔鏡下噴門形成術を施行した症例を後方視的にNJCの有無で2群に分け,背景,術後経過,合併症について比較した.

    【結果】NJC有り群が27例,NJC無し群が13例であった.注入開始はNJC有り群が1.0 ± 0.4日で,NJC無し群の2.7 ± 2.6日より早かった.full feedingまでの日数は,NJC有り群が6.1 ± 2.1日,NJC無し群の12 ± 6.5日より早かった.合併症の発生率は,NJC有り群が5例(18%)で,NJC無し群の7例(54%)より少なかった.

    【結論】NJCの使用により,早期注入再開,早期のfull feeding達成,術後合併症の低減が認められた.

  • 衣笠 章一, 遠藤 修史, 田口 裕子, 藤尾 実穂, 仲上 直子, 小野 真義
    原稿種別: 原著
    2022 年 4 巻 3 号 p. 117-123
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/10
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    【目的】胃がんの切除手術例における術後1年の貧血の状態と関連する栄養素の充足度を切除術式別に検討した.【対象と方法】2016年12月から2020年4月に胃がんの切除手術を受け,術後1年に受診できた100例を対象とした.貧血の状態と血清鉄,ビタミンB12,血清亜鉛,葉酸の値を胃が残る術式と胃全摘術,食物の十二指腸通過の有無別に比較した.【結果】胃全摘術例はヘモグロビン値が低く低栄養であり,血清鉄,ビタミンB12,血清亜鉛が低値であった.十二指腸をバイパスする術式も同様の結果で,赤血球分布幅が高かった.フェリチン低値かつビタミンB12低値の症例が最も小球性と低色素性を示し赤血球分布幅が高かった.血清亜鉛値は血清鉄値と弱い正の相関を示した.【結論】胃がん術後1年にはすでに多くの貧血関連栄養素欠乏を生じており,原因を正しく診断して適切な栄養指導や投薬を行うべきである.

  • 小澤 さおり, 野﨑 礼史, 平野 夏弥, 橋本 優奈
    原稿種別: 原著
    2022 年 4 巻 3 号 p. 125-131
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/10
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    【目的】急性期脳卒中患者の栄養管理における,当院使用の早期経腸栄養開始プロトコル導入による効果と課題を検討した.【対象および方法】経腸栄養を開始した脳卒中患者47名(本プロトコル導入前22名,導入後25名)について,絶食日数,排便状況,在院日数,経口摂取移行率,modified Rankin Scale(以下,mRSと略),入院時Glasgow Coma Scale,Geriatric Nutritional Risk Index(以下,GNRIと略)低下率について後方視的に比較検討した.【結果】絶食日数は短縮し排便状況は改善した.経口摂取移行率は増加,在院日数は短縮し,mRSは改善した.GNRI低下率に変化はなかった.本プロトコル導入後に栄養投与量がTotal Energy Expenditure(以下,TEEと略)に満たない患者は68%であり,このうち経口摂取を併用していた患者は71%だった.【結論】本プロトコル導入は,経腸栄養管理を標準化でき,絶食日数や排便状況,経口摂取移行率で改善がみられた.経口摂取移行期ではTEE不足になる傾向があり,積極的な経腸栄養併用と包括的個別栄養管理の必要性が示唆された.

臨床経験
  • 北川 一智, 片山 影美子, 萱原 璃緒, 森本 康裕, 高安 郁代, 須山 奈見子, 友澤 明徳
    原稿種別: 臨床経験
    2022 年 4 巻 3 号 p. 133-138
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/10
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    Enhanced Recovery After Surgeryプロトコール(以下,ERAS®と略)を用いた大腸がんの周術期管理において早期経口摂取の開始は重要な項目である.本邦でも導入を行う施設が増加しているが,固形食の開始時期は施設によって異なっている.当院でERAS®の適応となった腹腔鏡下に切除された大腸がん190例において,術後翌日に固形食が半量以上摂取できたA群152例と,出来なかったB群38例を比較検討した.背景因子では手術時間がA群で有意に短かったが他は有意差がなかった.結果ではA群では疼痛スコアが有意に低値で,術後悪心嘔吐の発生頻度は有意に少なかった(A群23.7%,B群44.7%).術後腸管麻痺の頻度はA群で有意に少なかった(A群2.6%,B群10.5%).術後在院日数もA群で有意に短縮していた(A群8.5日,B群12.9日).大腸がんの症例にERAS®を使用することで80%の症例が術後1日目に半量以上の固形食の摂取が可能であった.今後,高齢者の術後の疼痛対策を強化することがより良い成績につながると考えられた.

症例報告
  • 船水 良太, 春名 純平, 村中 沙織, 原田 敬介
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 4 巻 3 号 p. 139-144
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/10
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    長期の人工呼吸管理を要し,気管切開を行ったcoronavirus disease 2019(COVID-19)重症患者に対し,嚥下プロトコールを用いて初回嚥下機能評価を行い,早期に経口摂取を再開できた3症例を経験した.筋弛緩薬・鎮静薬・麻薬性鎮痛薬の投与日数は,それぞれ15日,12日,17日(平均値)であった.3症例とも経過中,経鼻栄養によって栄養管理がなされ,栄養指標は正常範囲内で経過した.気管切開後,平均10日以内に嚥下プロトコールを用いて嚥下機能評価を行い,摂食・嚥下障害の重症度診断では全例誤嚥ありと診断した.初回評価後,直接訓練を開始し,介入開始後3日以内に固形形態の食事摂取が可能となった.気管切開を行ったCOVID-19重症患者に対し,嚥下プロトコールを用いた初回嚥下評価後に早期嚥下リハビリテーションに介入することで,早期の経口摂取再開につながる可能性が示唆された.

研究報告
  • 西川 祥子, 栗原 重一, 長尾 健児
    原稿種別: 研究報告
    2022 年 4 巻 3 号 p. 145-150
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/10
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    【目的】宿泊施設で療養する新型コロナウイルス感染者の体調を把握し,アミノ酸シスチン・テアニン含有食品の使用感を調査する.【対象および方法】神奈川県の宿泊施設の新型コロナウイルス感染者に対し,シスチン・テアニン含有食品を任意で15日間摂取(1日1包)してもらい,その使用感と体調に関するWEBアンケートを実施した.【結果】67名がアンケートに回答し,うち46名が15日間のアンケートを完了した.体調に関する違和感の保有率は,調査期間中アンケート開始時から漸減した.最も頻度の高い違和感は嗅覚であった.シスチン・テアニン含有食品の使用感は肯定的であった.【結論】宿泊施設で療養する軽症の新型コロナウイルス感染者にも,生活に影響し得る症状があり,対策が必要であることが分かった.その対策として,シスチン・テアニン含有食品のような栄養学的アプローチが可能であると考えられ,療養者における忍容性も確認できた.

編集後記
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