学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
原著
急性期病院における栄養サポートチームメンバーの意識と行動に関する実態調査から明らかになった充実感を持つチームの条件
福原 麻希児玉 直樹真壁 昇森兼 啓太当麻 哲哉
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2023 年 5 巻 1 号 p. 11-20

詳細
Abstract

多職種横断的なNutrition Support Team(以下,NSTと略)のチームメンバーがチーム活動に充実感を持つときのチームの状態,および,メンバーの意識・行動に関する主観的な回答を得て多変量解析を行った.全国1,667病院へ調査票を郵送し,NSTの構成職種全員に回答を依頼した.218病院18職種1,047人分の回答を因子分析し,最尤法で抽出された16設問を対象に,チーム活動により「病院の診療レベルが上がっている」「患者・家族の満足度が高くなっている」を合成した目的変数で重回帰分析をした.その結果,(1)チーム活動が病院や病棟から評価されている(2)チームの方針や考え方が柔軟に見直されている(3)メンバーが「チームはうまくいっている」と感じている(4)メンバーが気分的な充実感を感じている,の4点が見出された.さらに,メンバー間のモチベーションの差が大きい場合や特定の人に依存している場合は,チームがうまくいっていないと感じる傾向があった.

Translated Abstract

Multivariate analysis was conducted in team members of cross-disciplinary nutrition support teams (NSTs) to evaluate subjective responses on team status and awareness and behaviors that cause members to feel fulfilled by team activities. A questionnaire was mailed to 1,667 hospitals nationwide, and all NST constituent positions were asked to respond. Multiple regression analysis was performed on 16 questions extracted by factor analysis and the maximum likelihood method for 1,047 responses from 18 occupations in 218 hospitals, with the composite objective variables: “Your team’s activities have increased the level of care at the hospital” and “Patient and family satisfaction has increased due to your team’s activities”. The following four characteristics were found: (1) The team communicates its activities to the hospital and receives recognition from the hospital and wards; (2) The team is flexible in revising its policies and ideas; (3) The team members feel that the team is doing well; and (4) The team members feel that the hospital staff has a high level of satisfaction. In addition, respondents tended to feel that the team did not perform well if there were large differences in motivation among team members or if the team was dependent on a particular person.

目的

チーム医療には,チームが病院を横断する全科型や疾患別,あるいは病棟全体や病院全体を1つのチームとする,もしくは同一職種や多職種の連携など,様々な形がある.本研究では,特に多職種横断的なチームに注目した.このチームは,各職種のなかで専門性の高い人が院内から選ばれて集まり,病棟を巡回する.現場におけるメリットは客観的で専門的な指導や助言を受けながら,患者ごとの治療目標を達成していくことにある.一方,デメリットの上位に来ることはチーム医療のプロセスにおいて,職種間のコミュニケーション上のコンフリクトが起こりやすい.これはチーム内の職種ごとの教育,その影響による文化で生じる価値観の違いが原因になることが多い1)

さらに,多職種横断的なチーム医療では病棟とチームの間でもコンフリクトを起こすことがある.例えば,チーム活動が病棟のやり方に合わない,考え方が違うなどだ.それでは成果を期待できないだけでなく,チームメンバーのモチベーションも下がる.多職種協働チームは医療のあり方に影響を与えている.だが,同時に,チームメンバーの意欲は影響する側の因子でもあり,その結果,影響を受ける因子でもあるため,この両者の関係を分析する必要性を感じた.

チームが業務遂行にあたる際,メンバーが従事する活動は「タスクワーク(task work)」と「チームワーク(team work)」に大別される2).三沢は,前者を課題特有の道具の使用や機器操作などの作業関連の活動,後者をメンバー間での情報交換や相互支援などの対人的な活動であると定義する3).これに当てはめれば,チーム医療は医療とチームワークから構成される.

チーム医療に関する文献は,医療に関してもチームワークに関しても報告されているが,比較的,医療に関する文献が多く,チームワークに関しては少ない.だが,Wangはチームにおけるプロセス段階に関する文献レビューを通して,組織心理学では伝統的なIPOモデル(Input入力,Processプロセス,Output出力)を取り上げ,歴代の多くの研究者がチーム内でのインタラクション(相互作用)に関心を示し,それはチームパフォーマンスへの決定的な影響となり得ると結論付けている4).つまり,チームワークの良さが医療の質の向上,患者・家族の満足度の向上につながることを示している.

そこで本研究では,多職種横断的なチームのチームメンバーがチーム活動に充実感を持つためにはどうしたらよいかについての知見を得ることを目的に,チームワークに焦点を当てた実証的な調査研究を実施し分析をした.

対象および方法

1. 対象の選定

本研究の対象は急性期病院のNutrition Support Team(以下,NSTと略)とした.NSTは診療報酬加算の要件である医師・看護師・管理栄養士・薬剤師のほか,実際は様々な職種が関わる.そこで,本研究ではNSTを構成する全職種を対象にアンケート調査を実施した.調査対象をDiagnosis Procedure Combination(DPC)制度導入病院(全国1,667施設,2016年時点)のNSTチームメンバーとした.

2. 研究方法

社会調査法を採用し,医療者に対するインタビュー,チームワークに関する先行研究を参考にしながら,調査票の設問を作成した.Salasらはチームワークについて心理学の側面から,実証研究では行動と密接に関連する態度,思考,感情といった心理的変数まで含めて検討される5)と述べており,本研究においてもこれを念頭に置いて,調査票にはチームメンバーの意識と行動,および,それによるチームの状況に関する設問を準備した.さらに,病院の関与がチーム医療やメンバーに影響をもたらすとも仮説を立て,5つの設問も加えて50設問とした(表1).

表1. 設問票の有効回答の概要
設問 1.当てはまらない 2.やや当てはまらない 3.やや当てはまる 4.当てはまる
Q.1 あなたのチームでは,メンバー同士が「チームの方針や考え方」「チームが大切にしていること」を日頃からよく話し合っている. 66(6.3%) 291(27.8%) 504(48.1%) 186(17.8%)
Q.2 あなたのチームでは,チームメンバーが提案した意見をカンファレンス(多職種が集まる会合・会議のすべて)で検討している. 17(1.6%) 78(7.4%) 444(42.4%) 508(48.5%)
Q.3 あなたのチームでは,メンバーの職種の専門性やスキルについて全員がよく理解している. 39(3.7%) 254(24.2%) 517(49.3%) 237(22.6%)
Q.4 あなたのチームでは,チームメンバー間の情報共有がうまくできているか,ときどき確認,および,再検討している. 32(3.0%) 232(22.1%) 638(60.9%) 145(13.8%)
Q.5 あなたのチームには,自分たちのチームと他のチーム,あるいは,自分たちのチームと病院をつなぐ役割の人(リンク役)がいる. 60(5.7%) 217(20.7%) 440(42.0%) 330(31.5%)
Q.6 あなたのチームは,いま,あまりうまくいっていない. 405(38.7%) 432(41.2%) 176(16.8%) 34(3.2%)
Q.7 あなたのチームでは,チームメンバーのモチベーションの差が大きい. 118(11.3%) 327(31.2%) 470(44.8%) 132(12.6%)
Q.8 あなたのチームでは,特定の人のがんばりに頼っている. 72(6.9%) 246(23.5%) 562(53.6%) 167(15.9%)
Q.9 あなたのチームでは,チームメンバーが困難な状況に置かれたとき,お互いを支えあっている. 22(2.1%) 169(16.1%) 643(61.4%) 213(20.3%)
Q.10 あなたのチームでは,チームメンバー同士が安心して話せる. 9(0.9%) 91(8.7%) 505(48.2%) 442(42.2%)
Q.11 あなたのチームでは,メンバー全員がチーム活動に貢献している. 54(5.2%) 339(32.3%) 452(43.1%) 202(19.3%)
Q.12 あなたのチームでは,医師が他職種に相談する場面がよくある.(医師の方は,あなたは他職種に相談することがよくある) 29(2.8%) 143(13.6%) 533(50.9%) 342(32.6%)
Q.13 あなたのチームの活動は,病棟スタッフに受け入れられている. 26(2.5%) 155(14.8%) 588(56.1%) 278(26.5%)
Q.14 あなたのチームでは,患者の病態や希望が変わったとき,チームの方針や考え方を柔軟に見直している. 8(0.8%) 96(9.2%) 537(51.2%) 406(38.7%)
Q.15 あなたのチームは,院内でチームの存在や活動を伝えるための工夫をしている. 34(3.2%) 243(23.2%) 509(48.6%) 261(24.9%)
Q.16 あなたのチームでは,決まったことはメンバー全員が 前向きに取り組んでいる. 21(2.0%) 168(16.0%) 637(60.8%) 221(21.1%)
Q.17 あなたのチームのカンファレンスは,形式的な業務報告会となることが多い. 196(18.7%) 494(47.2%) 303(28.9%) 54(5.2%)
Q.18 あなたのチームでは,職種に限らず,ヒヤリハット情報をメンバー間で共有している. 225(21.5%) 431(41.1%) 304(29.0%) 87(8.3%)
Q.19 あなたのチームでは,異なる職種間で専門スキルを教えあうことがある. 34(3.2%) 159(15.2%) 623(59.4%) 231(22.0%)
Q.20 あなたのチームの活動によって病院の診療レベルが上がっている. 28(2.7%) 235(22.4%) 650(62.0%) 134(12.8%)
Q.21 あなたのチームの活動によって,患者・家族の満足度は高くなっている. 17(1.6%) 215(20.5%) 698(66.6%) 117(11.2%)
Q.22 あなたのチームでは,患者・家族を含めてカンファレンスをしている. 574(54.8%) 287(27.4%) 157(15.0%) 29(2.8%)
Q.23 あなたの病院では,チーム医療に力を入れている. 15(1.4%) 123(11.7%) 560(53.4%) 349(33.3%)
Q.24 あなたのチームは病院から評価されている. 37(3.5%) 276(26.4%) 558(53.2%) 176(16.8%)
Q.25 あなたの病院では,先進的な取り組みを早くから取り入れようとする. 59(5.6%) 350(33.4%) 477(45.5%) 161(15.4%)
Q.26 あなたの病院の職員満足度は高いほうである. 89(8.5%) 452(43.2%) 453(43.2%) 53(5.1%)
Q.27 あなたの病院では,職員の疑問や問題提起に対応している. 66(6.3%) 394(37.6%) 516(49.2%) 71(6.8%)
Q.28 あなたは,日頃,挨拶や同僚との雑談を大事にしている. 4(0.4%) 47(4.5%) 486(46.4%) 510(48.7%)
Q.29 あなたは,患者が入院前の生活(食事・衣服・習慣・仕事・家族・趣味・入浴など)で大切にしていたことを聞き取り,チームメンバー全員に伝えている. 92(8.8%) 301(28.7%) 515(49.2%) 139(13.3%)
Q.30 あなたは,アサーティブ(相手を尊重し,誠実に,率直に,対等に)に話すスキルを身につけている. 10(1.0%) 294(28.1%) 664(63.4%) 79(7.5%)
Q.31 あなたは,チームの活動中,指示待ちの受け身でなく,「自分には何ができるか」を考えている. 9(0.9%) 237(22.6%) 598(57.1%) 203(19.4%)
Q.32 あなたは,日頃,業務の時間が足りないと思っている. 39(3.7%) 256(24.4%) 416(39.7%) 336(32.1%)
Q.33 あなたは,様々な職種間の連携(多職種連携)は難しいと思っている. 166(15.8%) 488(46.6%) 340(32.4%) 53(5.1%)
Q.34 あなたは,メンバー間で意見のコンフリクト(対立・不一致)が起こったとき,前向きに調整しようとしている. 7(0.7%) 116(11.1%) 732(69.7%) 192(18.3%)
Q.35 あなたは,医師の権威や,それに基づく人間関係・地位の上下関係を強く感じている. 55(5.2%) 374(35.7%) 474(45.3%) 144(13.7%)
Q.36 あなたは,患者やその検査データについて,自分の職種の専門性を活かした意見を述べている. 21(2.0%) 168(16.0%) 628(59.9%) 230(21.9%)
Q.37 あなたは,チームリーダーを信頼している. 10(1.0%) 46(4.4%) 448(42.7%) 543(51.8%)
Q.38 あなたは,チーム活動にやりがいを感じている. 21(2.0%) 150(14.3%) 570(54.4%) 306(29.2%)
Q.39 あなたは,「チーム医療によるメンバー間の相乗効果(一人で業務をしたり考えたりするより有意義であること)」を感じている. 3(0.3%) 57(5.4%) 520(49.6%) 467(44.6%)
Q.40 あなたは,チーム医療に関する研修は十分実施されていると思う. 88(8.4%) 503(48.0%) 393(37.5%) 63(6.0%)
Q.41 あなたは,チーム医療について,もっと学びたいと思っている. 9(0.9%) 110(10.5%) 572(54.6%) 356(34.0%)
Q.42 あなたは,自分の仕事をチームメンバーに評価されていると感じている. 58(5.5%) 386(36.8%) 530(50.6%) 73(7.0%)
Q.43 あなたは,自分の仕事での言動を振り返る習慣がある. 7(0.7%) 183(17.5%) 656(62.7%) 201(19.2%)
Q.44 あなたは,医師の方は「メンバーに権限(業務上の決定権)を委譲している」と思っている(上).非医師職は医師から「権限を委譲されている」と感じている(下) 3(0.3%) 49(29.2%) 100(59.5%) 15(8.9%)
90(10.2%) 331(37.5%) 345(39.1%) 114(12.9%)
Q.45 あなたは,チームメンバーに情報や連絡を伝えたとき,あなたの意図通りに相手が受け取ったか確認している. 25(2.4%) 330(31.5%) 611(58.3%) 81(7.7%)
Q.46 あなたは,病院内でおかしいと思ったことがあったとき,声をあげることができる. 85(8.1%) 431(41.2%) 446(42.6%) 85(8.1%)
Q.47 あなたは,病院全体のスタッフの人数が少ないと感じている. 44(4.2%) 252(24.0%) 419(40.0%) 332(31.7%)
Q.48 病院は,あなたに利益や経営の効率性を強く意識するよう言ってくる. 62(5.9%) 341(32.6%) 464(40.0%) 180(17.2%)
Q.49 現在,あなたの病院の経営は順調である. 164(15.6%) 459(43.8%) 375(35.8%) 49(4.7%)
Q.50 あなたは,病院の外部からの情報を積極的に取り入れている. 28(2.7%) 272(26.0%) 563(53.8%) 184(17.6%)

回答の測定尺度は4件法を採用した.心理検査でよく用いられるリッカート尺度5段階を採用しなかった理由は,「どちらとも言えない」という中間の選択肢を含めるとその回答が多くなり,調査結果に曖昧さが残ると懸念したからである.

設問に対する回答に影響をもたらす可能性があるため,回答者の属性として,①職種②職種の経験年数③チーム所属期間④チームに所属した理由⑤チームでの活動による残業時間の増減⑥時間外手当の有無⑦時間外手当は十分か⑧性別を記入させた.調査票は2016年10月に調査対象病院へ郵送した.

3. 統計学的検討

全ての統計学的検討はIBM SPSS Statistics 26を用いて,有意水準は0.05以下とした.因子分析は最尤法,プロマックス回転を行い,因子抽出は固有値1以上を基準とした.チームメンバーのモチベーションが自身の内面的な感覚だけでなく,所属する組織に対して持っている認識とどのような関連性を持っているのかを明らかにする目的で,チーム活動が病院の診療レベルに貢献しているのか,そして,患者・家族の満足度へ影響しているのかという回答者が持つ組織への認識との関連性を分析した.

本研究では,「Q.20 あなたのチームの活動によって,病院の診療レベルが上がっている(以下,Q.20と略)」と「Q.21 あなたのチームの活動によって,患者・家族の満足度は高くなっている(以下,Q.21と略)」を合成した目的変数を作成し,因子分析で抽出された16設問に対してステップワイズ法(変数増加法)による重回帰分析をした.なお,1設問に対して4件法にて解答しているため,合成変数は2から8までの7段階とした.さらに,「Q.6 あなたのチームは,いま,あまりうまくいっていない(反転項目)(以下,Q.6と略)」を目的変数に,最尤法で抽出された16設問に対してステップワイズ法による重回帰分析をした.ステップワイズのためのF値確率は投入0.05,除去0.10とした.なお,本研究ではリッカート尺度を順序尺度ではなく間隔尺度とみなし,説明変数および目的変数を量的データとして取り扱い,重回帰分析を行った.

4. 倫理的配慮

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の倫理委員会の承認を得た(承認番号:SDM-2016-E011).

結果

1. 回答者の属性

調査票返送期間内に45都道府県228病院(13.7%),1,761人から返送を得た.50設問のうち1設問でも回答に欠損がある,および,職種が不明な回答者を除外したところ,有効回答者数は218病院1,047人(男性38.5%,女性60.3%,不明1.2%)となった.調査結果に対する性別による影響はないと考え,性別不明も調査結果に加えた.各病院のNSTを構成する18職種から回答が集まった.チーム所属理由は有効回答者の80%が上司や病院からの指示だった.全職種の平均経験年数は11.8 ± 4.5年,チーム所属の平均年数は3.3 ± 1.4年だった(表2).

表2. 有効回答者の属性
職種 回答者数(割合) 職種の経験年数(年) チーム所属歴(年) チーム所属理由(複数回答) 残業時間の増減 時間外手当
上司・病院の指示 自発的に 資格を取得したから 増えた
やや増えた
変化なし 減った
やや減った
有り 無し
看護師 211(20.1%) 18.2 4.2 168(79.6%) 39(18.5%) 48(22.7%) 105(49.8%) 104(49.3%) 2(0.9%) 76(36.0%) 135(64.0%)
管理栄養士 177(16.9%) 14.4 5.1 141(79.7%) 41(23.2%) 39(22%) 107(60.5%) 70(39.5%) 0 124(70.1%) 53(29.9%)
医師 168(16.0%) 20.4 4.8 124(73.8%) 38(22.6%) 23(13.7%) 53(31.5%) 115(68.5%) 0 50(68.5%) 118(41.7%)
薬剤師 157(15.0%) 13.7 4.9 120(76.4%) 45(28.7%) 28(17.8%) 75(47.8%) 82(52.2%) 0 92(58.6%) 65(41.4%)
言語聴覚士 109(10.4%) 9.8 3.7 94(86.2%) 26(23.9%) 3(2.8%) 42(38.5%) 67(61.5%) 0 62(56.9%) 47(43.1%)
臨床検査技師 88(8.4%) 15.4 3.7 81(92%) 13(14.8%) 2(2.3%) 35(39.8%) 53(60.2%) 0 46(52.3%) 42(47.7%)
理学療法士 52(5.0%) 9.8 2.1 33(63.5%) 24(46.2%) 5(9.6%) 20(38.5%) 32(61.5%) 0 26(50.0%) 26(50.0%)
作業療法士 20(1.9%) 9.0 1.1 17(85%) 5(25%) 1(5%) 8(40.0%) 12(60.0%) 0 4(20.0%) 16(80.0%)
医療事務 31(3.0%) 10.8 2.5 31(100%) 0 0 7(22.6%) 24(77.4%) 0 19(61.3%) 12(38.7%)
医療ソーシャルワーカー 5(0.5%) 6.0 2.1 5(100%) 0 0 0 5(100%) 0 3(60.0%) 2(40.0%)
歯科衛生士 21(2.0%) 4.5 4.5 18(85.7%) 3(14.3%) 0 8(38.1%) 13(61.9%) 0 15(71.4%) 6(28.6%)
診療放射線技師 8(0.1%) 10 1 6(75%) 2(25%) 1(12.5%) 0 3(37.5% 5(62.5%) 2(25%) 6(75%)
臨床工学技士
診療情報管理士
心理士
歯科医師
助産師
介護福祉士
合計人数 1,047 838(80%) 236(22.5%) 150(14.3%) 460(43.9%) 580(55.4%) 7(0.1%) 519(49.6%) 528(50.4%)
平均値 11.8 3.3
標準偏差(±) ±4.5 ±1.4

注:診療放射線技師・臨床工学技士・診療情報管理士・心理士・歯科医師・助産師・介護福祉士の有効回答者は1人,あるいは,2人で個人が特定される可能性があるため,1つにまとめた.

2. 因子分析結果

50設問に対する因子分析の前に,その妥当性について検討した結果,Kaiser-Meyer-Olkinの標本妥当性は0.932,Bartlettの球面性検定ではχ2 = 16,892(p < 0.001)となり,十分な妥当性が示された.因子分析の結果,固有値1以上,および因子のスクリープロットから因子数を4と決定した.第1因子はチームの状況に関わる6設問が抽出され,因子名を「医療の質と患者・家族の満足度につながるチーム内外の評価」とした.第2因子はチームメンバーの意識や行動に関する5設問が抽出され,因子名を「チームメンバーとしての自律的な行動」とした.第3因子はチームメンバーの意識の差に関する3設問が抽出され,因子名を「チームの協働」とした.第4因子は病院と職員の関係に関する2設問が抽出され,因子名を「職員満足度」とした.第1因子から第4因子の因子負荷量を表3に示す.また,第1因子~第4因子までの因子相関行列を求めたところ,最大は第1因子と第2因子間で相関係数0.498であり,強い相関は認められなかった(表4).多重共線性は全設問において棄却された.

表3. 有効回答に対する因子分析結果
因子名 因子 調査票における設問内容 第1因子 第2因子 第3因子 第4因子
第1因子 医療の質と患者・家族の満足度につながるチーム内外の評価 Q.20 あなたのチームの活動によって病院の診療レベルが上がっている. 0.794 –0.057 0.056 0.019
Q.21 あなたのチームの活動によって,患者・家族の満足度は高くなっている. 0.774 0.002 0.091 –0.011
Q.24 あなたのチームは病院から評価されている. 0.611 –0.082 –0.025 0.224
Q.13 あなたのチームの活動は,病棟スタッフに受け入れられている. 0.604 –0.028 –0.052 0.009
Q.14 あなたのチームでは,患者の病態や希望が変わったとき,チームの方針や考え方を柔軟に見直している. 0.548 0.159 –0.050 –0.121
Q.15 あなたのチームは,院内でチームの存在や活動を伝えるための工夫をしている. 0.544 0.103 0.043 –0.038
第2因子 チームメンバーとしての自律的な行動 Q.31 あなたは,チームの活動中,指示待ちの受け身でなく,「自分には何ができるか」を考えている. –0.031 0.746 –0.005 –0.001
Q.36 あなたは,患者やその検査データについて,自分の職種の専門性を活かした意見を述べている. 0.025 0.659 0.013 –0.027
Q.42 あなたは,自分の仕事をチームメンバーに評価されていると感じている. 0.151 0.539 0.020 0.078
Q.34 あなたは,メンバー間で意見のコンフリクト(対立・不一致)が起こったとき,前向きに調整しようとしている. 0.064 0.524 –0.006 –0.002
Q.29 あなたは,患者が入院前の生活(食事・衣服・習慣・仕事・家族・趣味・入浴など)で大切にしていたことを聞き取り,チームメンバー全員に伝えている. –0.095 0.476 –0.070 0.023
第3因子 チームの協働 Q.7 あなたのチームでは,チームメンバーのモチベーションの差が大きい –0.027 0.014 0.798 –0.004
Q.8 あなたのチームでは,特定の人のがんばりに頼っている. 0.157 –0.077 0.722 –0.049
Q.6 あなたのチームは,いま,あまりうまくいっていない. –0.369 0.061 0.489 0.078
第4因子 職員満足度 Q.27 あなたの病院では,職員の疑問や問題提起に対応している. –0.003 0.040 0.016 0.807
Q.26 あなたの病院の職員満足度は高いほうである. –0.001 –0.004 –0.040 0.799

表4. 因子分析の因子相関行列結果
第1因子 第2因子 第3因子 第4因子
第1因子 1 0.498 0.430 0.497
第2因子 1 0.233 0.182
第3因子 1 0.178
第4因子 1

3. 重回帰分析結果

Q.20,Q.21を合成した目的変数に,最尤法で抽出された16設問に対して重回帰分析をした結果,説明変数としてもっともよい7設問の組み合わせが選ばれた.7設問とは表5の通りである.

表5. 「Q.20 チームの活動によって病院の診療レベルが上がっている」「Q.21 チームの活動によって,患者・家族の満足度は高くなっている」の合成変数を目的変数とした重回帰分析の結果
設問 標準偏回帰係数 t値 有意確率
β
(定数) 8.438 <0.001
Q.24 あなたのチームは病院から評価されている. 0.335 11.377 <0.001
Q.14 あなたのチームでは,患者の病態や希望が変わったとき,チームの方針や考え方を柔軟に見直している. 0.153 5.527 <0.001
Q.15 あなたのチームは,院内でチームの存在や活動を伝えるための工夫をしている. 0.122 4.601 <0.001
Q.42 あなたは,自分の仕事をチームメンバーに評価されていると感じている. 0.106 4.311 <0.001
Q.6  あなたのチームは,いま,あまりうまくいっていない. –0.103 –3.909 <0.001
Q.13 あなたのチームの活動は,病棟スタッフに受け入れられている. 0.088 3.029 0.003
Q.26 あなたの病院の職員満足度は高いほうである. 0.085 3.336 0.001

次に,Q.6を目的変数に,最尤法で抽出された16設問に対して重回帰分析をした結果,説明変数としてもっともよい8設問の組み合わせが選択された.8設問とは表6の通りである.

表6. 「Q.6 あなたのチームは,いま,あまりうまくいっていない」を目的変数にした重回帰分析の結果
設問 標準偏回帰係数 t値 有意確率
β
(定数) 12.651 <0.001
Q.7  あなたのチームでは,チームメンバーのモチベーションの差が大きい. 0.315 10.482 <0.001
Q.14 あなたのチームでは,患者の病態や希望が変わったとき,チームの方針や考え方を柔軟に見直している. –0.142 –4.886 <0.001
Q.8  あなたのチームでは,特定の人のがんばりに頼っている. 0.138 4.806 <0.001
Q.24 あなたのチームは病院から評価されている. –0.118 –3.795 <0.001
Q.20 あなたのチームの活動によって病院の診療レベルが上がっている. –0.103 –3.412 0.001
Q.13 あなたのチームの活動は,病棟スタッフに受け入れられている. –0.087 –2.887 0.004
Q.31 あなたは,チームの活動中,指示待ちの受け身でなく,『自分には何ができるか』を考えている. 0.068 2.724 0.007
Q.15 あなたのチームは,院内でチームの存在や活動を伝えるための工夫をしている. –0.063 –2.259 0.024

考察

多職種協働チームは医療のあり方に影響を与えている.だが,同時にチームメンバーの意欲として影響する側の因子でもあり,その結果,影響を受ける因子でもある.本研究はチームメンバーが精神的に受ける影響を調査したものであり,医療の質や患者・家族の満足度を客観的に表したデータとの関連性を調査したものではない.

本研究の特徴は,NSTの診療報酬加算要件となる4職種だけでなく,現場で構成員として業務に従事する18職種の意識と行動を分析したこと,および回答者数が1,047人と大規模な調査になった点である.また,Q.6に「当てはまらない」「やや当てはまらない」が837人(79.9%)だったことから,本研究は回答者がチームはうまくいっていると主観的に考える対象集団での解析結果となる.解析に有効な回答者は職種経験年数が平均値で11.8 ± 4.5年と中堅以上の人が多く,チーム所属歴が3.3 ± 1.4年でチームにもなじんでいる様子が窺える.

NSTのチームメンバーがチーム活動に充実感を持ち,医療の質と患者・家族の満足度を高めると主観的に感じたときのチームの状態,および,チームメンバーの意識と行動について多変量解析をした結果,以下4点が見出された.

第一に,Q.13,Q.15,Q.24,Q.42の説明変数(表4)からはチームが開放的なこと,および,チーム活動の支持を得るために院内へその活動を発信し,病院や病棟から評価されている傾向が見られた.多職種横断的チームは活動を病院や病棟に受け入れてもらう必要がある.また,チーム外からの評価は客観的な指標の一つになる.院内でチームの存在や活動を伝えるためにどのようなことを実践しているかについては,調査票のQ.15の記述式回答欄に記載させた(表7).

表7. 調査票の自由記載欄「院内でNSTの存在や活動を伝えるための工夫」例
回答職種 工夫内容
様々な職種 朝礼,院内掲示,院内メール,NSTニュースなどの広報誌で活動報告
ランチョンなどの勉強会,院内講演会
多職種で学会参加
医師 カンファレンスをオープンにしている
看護師 科長会議や師長会議で報告する
各病棟にリンクナースを配置,月1回の委員会での連絡を徹底
新年会の余興で
薬剤師 チーム介入をパスに組み込む
NST専従者が各病棟のカンファレンスに参加
管理栄養士 病棟出前勉強会
管理栄養士を病棟担当制にして,顔を覚えてもらう
Medical Quality Improvement(MQI)活動での発表
学会発表での予演会,医局で口頭アピール
NST月間をつくり,職員全体に啓発
委員会の議事録を院長・副院長・看護部長へ提出し,決裁を頂いている
言語聴覚士 リンクナースを通して病棟会議で伝達してもらう
臨床検査技師 病棟へ出向き,患者やスタッフとコミュニケーションを取る
歯科衛生士 ナースステーションに次回来棟予定日を記入した用紙を掲示

太田は,組織学の観点から,本人にとって認めてほしい相手からの承認,および,自分の能力に対する客観的な情報のフィードバックは有能観や自己効力感を高め,仕事へのモチベーションや業績の向上につながると述べている6).本研究では,病院全体が院内のチーム活動に注目し,管理者や病棟からフィードバックや評価を示すことで,チームメンバーのモチベーションが高まり,チーム活動が促進され,「医療の質,および,患者家族の満足度を高める」とチームメンバーが主観的に感じるような充実感を持つことが示唆された.

第二に,Q.14からは,Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)のPDCAサイクルを実施している傾向が見られた.それはNSTが成果を出すためには,患者の容体に応じてきめ細かく対応することで,病棟の主治医や看護師等から支持を得られることが重要になるからと考えられる.

第三に,Q.6が負の係数で選択された.多職種横断的チームのチームメンバーが「医療の質および患者家族の満足度を高める」と主観的に充実感を持つためには,まず,チームがうまくいっていると感じることが重要になると示された.チームの職種間で尊重し合って信頼関係を構築する,そのうえで病棟スタッフと活動に対する合意形成をはかっていると考えられる.

しかし,チームがうまくいく,うまくいかないとはチームがどういう状態を指すのだろうか.そこで,Q.6を目的変数に重回帰分析をした結果,Q.7,Q.8の説明変数から,特定の人のがんばりに頼っているチームは,チームメンバーがチームはうまくいっていないと考える傾向が見られた.チームは相互に活発なやりとりがあるほど,よりチーム活動の結果がよくなることも示されている4)

このほか,Q.31が正の係数となったことに違和感があり,調査結果を精査し共著者間で検討を重ねた.その結果,Q.31に「ややそう思う」「そう思う」と回答した801人のうち,Q.6に「やや当てはまる」「当てはまる」と回答した人が165人(20.5%)いた.また,前述の801人のうち,属性データでチームに「自発的に参加した」と答えた人が210人(26.2%)で,これは自発的に参加した人(236人)全体の89.0%にのぼった.つまり,Q.31に「ややそう思う」「そう思う」と回答した人はチーム活動に自発的に参加した人が多く,そのやる気のある人がQ.6に「やや当てはまる」「当てはまる」と回答した場合,それは所属チームが回答者の理想とするチーム像に達していない,あるいは,回答者がその行動を意識しているにもかかわらず,チームリーダーやメンバーから評価や承認を受けていないことで,チームがうまくいっていないと感じるのではないかと考えられる.

第四に,Q.26からはチームメンバーが病院の職員満足度を高いと感じていることも,チーム活動によって気分的な充実感を持つことと関連があると示された.

なお,属性データを含めた重判別分析も検討したが,全く選択されなかった.今後,詳細な検討が必要である.

結論

多職種横断的なNSTのチームメンバーを対象に,チーム活動に充実感を持つときのチームの状態やチームメンバーの意識・行動に関する主観的な回答を得て,多変量解析を行った.その結果,(1)チームの活動が病院に伝わり,病院や病棟から評価されている(2)チームの方針や考え方が柔軟に見直されている(3)チームメンバーが「チームがうまくいっている」と感じている(4)チームメンバーが気分的な充実感を感じているという4点が見出された.さらに,チームメンバー間のモチベーションの差が大きい場合や,特定の人に依存している場合は,チームがうまくいっていないと感じる傾向があった.

 

本論文に関する著者の利益相反なし

謝辞

本研究の実施にあたり,調査にご協力頂いた全国の医療従事者の皆様,および,研究の方向性についてご助言を頂きました方々に深謝する.

引用文献
 
© 2023 一般社団法人日本臨床栄養代謝学会
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