学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
報告記
2023年度国内施設研修支援制度研修報告記
白石 沙耶可
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2024 年 6 巻 3 号 p. 165-166

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研修概要

1. 研修施設名

東京医科歯科大学病院臨床栄養部

2. 研修期間

2024年1月15日~1月19日

報告

この度,日本栄養治療学会(旧:日本臨床栄養代謝学会)2023年度国内施設研修支援制度の研修採用者としてご選定いただき,2024年1月15日から1月19日の5日間,東京医科歯科大学病院臨床栄養部にて研修を受けて参りました.研修を希望した目的は,Intensive Care Unit(以下,ICUと略)の栄養管理と早期栄養加入管理実施加算の算定に必要な手順を学ぶことでしたが,東京医科歯科大学病院ではInflammatory Bowel Disease(以下,IBDと略)の栄養管理についても学べると伺ったため,研修先として希望させていただきました.

東京医科歯科大学病院は東京都文京区にある病床数823床の特定機能病院で,大都会の中央に位置しています.今回研修を受けたICUは2023年10月に運用が開始されたばかりのC棟(機能強化棟)にあり,14床の病室は全て個室で,全体的に空間が広く,明るい作りであるのが印象的でした.

今回の研修では,朝8時15分から行われるICUの多職種回診に毎日同行させていただきました.東京医科歯科大学病院のICUはセミクローズドで,回診にはICU医師,主科医師,看護師,薬剤師,管理栄養士,理学療法士,リハビリ科医師,臨床工学技士が参加していました.回診はICU医師が司会進行役となり,職種ごとに決められた順番でそれぞれの立場から質問や提案を発言していき,最後にICU医師が本日実施することをまとめる,という流れで行われていました.患者一人あたりの回診時間は5~10分と短いですが,フォーマットに沿った順番と内容で各職種が発言するため,効率的に情報共有が行われていると感じました.

ICUにおける管理栄養士の役割は,患者の栄養状態をアセスメントし,入室早期から適切な栄養管理を実施すること,特に経腸栄養の実施に禁忌のない患者の場合は,入室から48時間以内に経腸栄養を開始するよう栄養投与計画を立案することです.研修で管理栄養士は,経腸栄養の開始の提案,経腸栄養剤の種類や投与速度の提案のほか,高カロリー輸液を含めた栄養投与計画の立案や,リフィーディング症候群リスクの高い患者については電解質のモニタリングや補正の提案まで行っていました.また,水分投与量を減らしたい患者については,経腸栄養からの水分量を確保するため,抗菌薬による水分量を減らせないか薬剤師と協議するなど,幅広い視点で必要栄養量投与の可能性を検討されていました.回診後はベッドサイド訪問し,10時の昼食のオーダー締め切り時間に間に合うよう給食オーダーの変更代理入力を行っており,医師・看護師からのタスクシフトも進んでいました.

当院のICUは,重症患者の栄養管理に精通したICU専属の医師によって早期から栄養介入が行われています.今後は研修で得た学びを活かして,管理栄養士の参加により医師の負担を軽減し,ICU退室後の病棟でシームレスに栄養管理が行われるよう,体制を整備していきたいと思います.

IBDの栄養指導では,潰瘍性大腸炎とクローン病の栄養指導を見学させていただきました.IBDは食べたものが原因で症状が悪化することがあるため,栄養指導では控えたほうがよい食事の説明に時間を使ってしまいがちです.しかし,見学させていただいた栄養指導では,潰瘍性大腸炎の場合は腹部症状や排便回数,排便の切迫感とその時間帯,クローン病ではつまりを感じる部位やその程度について丁寧に聞き取りし,何なら食べられるのか,どのように工夫したら食べられるのか,という個別性に富んだお話をされていました.また「排便をコントロールすることは人間の尊厳」とおっしゃっていたことがとても印象で,排便で失敗を経験しないよう,3食バランスよく食事をとることにこだわりすぎず,患者さん個々の生活スタイルに合った食事のとり方を提案することが重要であることを学びました.そのほかにも,エレンタールの美味しい飲み方や,便性状の改善に有用なサプリメントなど,長年の指導経験に基づいた貴重な情報をたくさん教えていただきました.

今回の研修では上記以外に,Nutrition Support Team回診や病棟専従管理栄養士の業務,入院支援,給食管理,災害時の食事提供など,管理栄養士業務全般について幅広くお教えいただき,目から鱗の多くの学びをたくさん得ることができました.このような機会を与えてくださった日本栄養治療学会(旧:日本臨床栄養代謝学会)国内研修支援制度の皆様に深く感謝申し上げます.また,お忙しい中研修を実施してくださった東京医科歯科大学病院臨床栄養部の皆様,研修に快く送り出してくださった当院栄養管理センターの皆様にも心から感謝申し上げます.

写真1.集中治療室(ICU)が配置されているC棟(機能強化棟)
 
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