神奈川県立こども医療センター
2. 研修期間2024年1月15日~1月19日
2024年1月15日~2024年1月19日,神奈川県立こども医療センター(以下,こども医療センターと略)の研修に参加いたしました.
私が今回の研修制度に応募した理由は大きく2つあります.
1つ目の理由は,弊院のNutrition Support Team(以下,NSTと略)委員会を円滑に進めるための知見を得るためです.弊院では,栄養科,看護部,薬剤科で1年ごとにNST委員会の事務局を交代しています.交代の年に診療報酬改定や病棟機能などの制度が変更になると,引継ぎが上手くできないことが今までにありました.
そこで今回の研修では,他院での事務局の仕事と,NSTの対応について見学しました.今回往訪したこども医療センターでは,事務局とサテライトのNutrition Project Team(以下,NPTと略)(テーマごとの少人数による栄養プロジェクトチーム)が8チームあり,各チームはリンクナース,医師,栄養士,看護師,薬剤師が関わっていました.今回の研修で対応,教育していただいた高増先生は,アドバイザーとしてNPTチーム全体を把握されていました.
事務局の仕事については,栄養士が行っており非常に煩雑で多忙でした.同時期に研修で一緒になった他の病院の先生方にもお話を伺いましたが,どこの病院も基本は栄養士が事務局を担っており,関わるどの部署も他の仕事と両立せざるを得ず,業務の効率化の難しさを感じました.弊院のような一年交代の事務局の場合,NSTを円滑に行うためには,業務整理を行って各部門の役割を明確化させることが大切であり,必要な業務を限定して次年度に申し送りできる体制づくりの必要性を感じました.
2つ目の理由は,普段関わることがない小児科の中で,特に栄養分野や診療について知見を深めたかったからです.
弊院は120床の中小病院で回復期リハビリテーション病棟と障害者病棟という病院機能のため入院患者は高齢者がほとんどで,小児の診療を行うことはありません.小児科は門外漢ではありますが,今回の研修で,外来診療,救急外来の診察,重心患者の胃瘻交換を見学させていただきました.
外来診療見学は,アレルギー患者の外来診療でした.次回外来受診時に,アレルギー原因物質の入った食品の経口負荷試験(Oral Food Challenge;以下,OFCと略)を行うための事前説明でした.OFCについて,主治医の先生からは何もないことを確認し安全摂取量を確認することだとお聞きしました.何もないことを確認するという視点が今まで無く,アレルギーについて勉強しようと思う良いきっかけになりました.
救急外来では,アナフィラキシーショックでエピペン投与後の患者の経過観察の見学をさせていただきました.私が見学した時には,症状は既に落ち着いており,瞼の腫れが多少残っている状況でした.このようなアレルギーの経過をみる機会はほとんどなかったため貴重な経験でした.
胃瘻交換はバルーン式の胃瘻でした.バルーン式はすぐに交換できると聞いていましたが,その手技の速さに驚きました.また,胃瘻増設時の注意点や気切がある患者での胃瘻交換の話を外科の先生より伺いました.気切がある患者ではVPシャントと胃瘻は基本一緒にしないことが多いそうですが,こども医療センターでは両立できるように工夫していました.非常に興味深かったです.
病院内の様々な部門の担当者のお話もお聞きする機会にも恵まれました.カンファレンス見学だけでなくNeonatal Intensive Care Unitの担当看護師,栄養士や薬剤師をはじめ,高齢者の入院が主である弊院ではお話する機会のない保健師からもお話を伺うことが出来ました.保健師の業務は,患者,患者家族の不安や不満だけでなく,福祉サービスの案内や就職支援等多岐に渡っています.保健士の話から,福祉を社会へ繋げていく重要性を実感しました.
患者の退院後の生活の支援は小児も高齢者も大事です.他職種と情報共有を行い,薬剤師としてどう支援に関わっていくか,ポリファーマシーの影響を考えての薬の整理や退院後に管理しやすい薬の用法の提案など,自分に出来ることを地道に行っていくことの必要性を改めて認識しました.
また,今回の研修では栄養学の知見を得ることが出来ました.特に興味深かったのは,解糖系についてです.教科書通りに覚えていただけで,酵素の蛋白質の大きさや蛋白質と基質の大きさについて,また解糖系の酵素がどうやって特定の基質に反応するか実際の生体内の反応としてはあまり考えたことが無かったため,目が開かれる思いがしました.
解糖系はグルコースに始まり,10種類の酵素により段階的に化学的な変換が起こり,その際1つの段階ごとにミルフィーユのように層になって行われ,反応経路全体はスムーズに暴走することがないよう,酵素は各段階で制御されている,という点を改めて知識として得ることができました.
その他にも,和食の話や,日本の地層や地質は美食が生まれやすい土壌であるという話,蛋白質のダルトンの考え方,各成分栄養のバランスについての話もありました.これらは自分がただ覚えていただけで理解していなかったため,再度視点を変えて勉強しようと思います.
今回の研修では,いろいろなことにアンテナを張り廻らして情報を取り込み,知識をアップデートしていくことの重要性を感じました.受け身で情報を飲み込むのではなく,自分から情報を得て,今後は積極的に情報を発信していけるようになりたいと思います.
また,自分のこれからのキャリアについても見つめ直す良い機会でした.これまでは漠然としていましたが,短期的にマイルストーンを設定し,その達成のために期限を決めて何をしていくか,最終的な目標を作り,今後のキャリアをどうしていくかという気づきを得られました.まずはお勧めされたLLLを受講しようと思っています.
この度はこういった貴重な機会を頂きありがとうございました.対応していただいたこども医療センターの高増先生をはじめとする先生方,JSPENの担当の方々に心より感謝申し上げます.今後,JSPENで活躍できるように努めていきたいと思います.