学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
報告記
2024年度国内施設研修支援制度報告記
樋上 梨絵
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2025 年 7 巻 1 号 p. 49-50

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 研修概要

1. 研修施設名

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院

2. 研修期間

2024年9月2日~9月6日

 報告

今回,研修における志望動機は,Intensive Care Unit(以下,ICUと略)領域でのNutrition Support Team(以下,NSTと略)専門療法士としての栄養管理の方法や介入方法を学ぶことと,看護師への栄養療法の教育方法を学ぶことを目的として参加をしました.

1. 実習内容

1日目:全体のオリエンテーションを受けた後,ICUで入院している患者に対して,栄養スクリーニング,栄養アセスメント,リフィーディング症候群の評価,Global Leadership Initiative on Malnutrition(以下,GILMと略)基準を用いての評価を行ったうえで,実際にNSTとして提案する内容の検討を行いました.ICU領域では,リフィーディング症候群の患者が半分以上いることもあるため,ICU領域の全患者を対象に,病棟看護師や管理栄養士で入院時にリフィーディング症候群のハイリスクチェックを行って,早期の発見につなげていることを学びました.また,リフィーディングハイリスク患者に対しては,NSTとして主治医に対して,電解質または炭水化物の量のモニタリングを継続的に行ってもらうため,わかりやすくコメントに表示して注意喚起を行っていることを学びました.患者に対しては,短期・長期目標を立案し,各職種が同じ目標に向かって,専門職ごとに介入を行っていること学びました.

2日目:管理栄養士からの院内栄養管理方法や,NSTの介入方法や回診方法を学びました.NSTとしての介入件数は当院よりは少なかったですが,病棟ごとにNSTチームができているため,チームができているところは,各科型でのNST回診が行われていました.各科型では,患者の把握がしやすいことやその場で各職種が居合わせたら,ミニディスカッションができることが良い点と思いました.

救命救急センターの医師からも,講義をしていただき,リフィーディング症候群の対策として,救急外来からリフィーディング症候群の検索を行うため,血液検査の項目に,ビタミンB1を必須としていることや,点滴で使用できるビタミン剤が救急外来に常備されていることに驚きました.リフィーディング症候群は,重症患者の約半数発症することも学びました.また,今まで私自身が栄養管理を行ってきて,疑問に思っていたことも教えていただきました.

リハビリテーション部からの講義では,看護師にもリハビリを継続してもらえるような取り組みとして,写真でリハビリの方法を可視化して,継続的にリハビリを行っていく大切さを学びました.

3日目:午前中は,実際にリハビリの様子の見学を行ったあと,リハビリテーション部の方から,リハビリと栄養管理,口腔ケアの管理方法の講義を受け,リハビリでも口腔ケアを行っていることや栄養を得意としていない,セラピストでもわかりやすいようなカルテの入力ツールの導入を行っており,セラピストの誰もが,栄養に関して評価できるような体制づくりをしていることに驚きました.

午後からは,リハビリ栄養について学ぶ機会があり,症例患者に対して,International Classification of Functioning, Disability and Health(以下,ICFと略)を用いて評価を行い,症例検討を行いました.私が,実際にICFを用いて,患者の全体像を把握することが初めてであったため,今後各職種間で,ICFを用いて,SMARTで目標を設定し,共通の課題を明確にすることに役立つことを学びました.

NST回診にも参加させていただきました.

夜,栄養管理セミナーに,参加させていただきました.重症患者に,早期の高カロリーや高蛋白有害なことや,血清リンが低値の場合は,死亡率が上昇してしまうこと,ロイシンが多いと血清リンが下がってしまうことを学びました.

4日目:毎朝行われている,ICUでのカンファレンスに参加させていただきました.ICUでのカンファレンスは,医師,診療看護師,看護師,薬剤師,管理栄養士,セラピストが集まり,その日の治療方針や栄養管理方法などのディスカッションを行っていました.

病棟看護師や特定行為看護師,診療看護師に,看護師に対しての栄養教育について実際に話を伺うことができました.看護師は,栄養に関して苦手意識が強く,栄養が大切とはわかっていても,勉強することまでには至らないと話されており,これはどこの病院も同じことだと実感しました.また,オンジョブでの教育方法の大切さも学びました.

5日目(最終日):研修の振り返りを行い,自身が学んだことを発表させていただきました.その後,討論会を行いました.

2. 所感・感想

今回,研修に参加しての最大の学びは,各職種での共通の目標に向かって,チームで取り組むことの大切さです.各職種が,栄養に関することを把握しており,目標を達成するために,当院でも,得意分野でできること,足りないことの検討を行い,目標が達成できる環境を構築していく体制を来年度までに構築し,来年度からは,実際に各職種が目標を達成できるようにリーダーシップを図らなくてはいけないと思いました.また,看護師の教育には,難しいと思わせない栄養管理の方法を構築していく必要があると思いました.今回,他施設で実際に行っている,栄養管理の現場を体験することで,今まで疑問に思っていたことも実際に質問することができ,また看護師の教育面では,同じことを悩まれていることも分かりました.

充実した5日間の研修で,多くの学びを得ることができ,当院の栄養管理にも生かしていけるように,各職種に,働きかけをしていく必要があると思いました.

最後に,研修を受け入れてくださった,聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院のNSTの皆さま,今回の企画を運営していただいた将来構想委員会のメンバーの先生方,栄養のことだけではなく,看護教育においてもご指導いただきました,森みさ子副看護部長,川畑亜加里救命救急センター副看護師長に深く御礼を申し上げます.

 

掲載している写真は,被写体となった方から,掲載への同意を得ています.

写真1. 討論会の様子
写真2. ICUで
 
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