学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
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原著
総説
  • 菅野 義彦, 佐藤 由美, 原 純也, 宮澤 靖, 槇枝 亮子, 山口 めぐみ, 本川 佳子, 遠藤 陽子, 西岡 心大, 斎藤 恵子
    原稿種別: 総説
    2025 年7 巻1 号 p. 9-15
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/28
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    2022年の診療報酬改定において新設された入院栄養管理体制加算は,管理栄養士が病棟に常駐して医療チームの一員となって勤務することが評価推奨されたと考えられる.しかし多くの特定機能病院では体制構築の準備が不十分であり,現状のリソースで実施可能な範囲で行わざるを得ず,期待される結果を出せる状態ではない.先行した施設では執行部から体制構築による収支試算が求められ,人員の選抜や配置調整などにも大変な労力を要した.加算による部署収入増や入院期間の短縮など財務的価値と考えられる結果も得られたが,現場では他の医療者とのコミュニケーション向上やタスクシフト,患者満足度など数値化の難しい非財務的価値が得られた.こうした効果をさらに多くの施設から報告して,発足した制度を多くの施設に普及するための資料とする必要がある.

臨床経験
  • 茅田 洋之, 渡辺 薫子, 中川 千佳, 塚本 裕巳, 植村 昌弘, 郷間 厳
    原稿種別: 臨床経験
    2025 年7 巻1 号 p. 17-21
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/28
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    当院では3次救急搬送となる重症熱中症患者に対して血中セレン濃度測定を行っており,血中セレン濃度とその臨床的特徴を検討した.

    2020年1月から2023年7月の間に当院に3次救急搬送となった熱中症患者のうち,血中セレン濃度測定を行った27例を対象として診療録ベースの後ろ向きコホート研究を行い,血中セレン濃度に加え,血中セレン値が正常下限を下回る症例をセレン低値群として,セレン正常群と低値群との間で患者背景,臨床所見,血液学的栄養状態の指数,治療経過と転機に差が見られるかを比較検討した.

    27例中9例(33%)に,血清セレン低下例を認め,セレン正常群と比較して,セレン低値群では有意にalb,ChEが低く(alb:p = 0.01,ChE:p = 0.01),感染合併例が多かった(p < 0.05).

    重症熱中症患者では,潜在的な慢性低栄養や感染合併を背景としたセレン低値症例が一定数存在することが示唆された.

症例報告
  • 川名 秀俊, 松下 友美, 藍野 芙季子, 橋場 礼陽, 村上 千晴, 野田 茜, 加藤 礼子, 樋口 智也, 谷中 和昭, 相田 俊明
    原稿種別: 症例報告
    2025 年7 巻1 号 p. 23-28
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/28
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    飲酒歴のない40歳男性.Body mass index 26.0 kg/m2.糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis;以下,DKAと略)と急性膵炎の合併で緊急入院となった.中性脂肪1,546 mg/dLと異常高値であり,DKA→糖尿病脂血症→急性膵炎とする一連の病態が推測された.インスリンの持続静注や蛋白分解酵素阻害薬の投与などの初期治療を行い経時的に病態は改善した.脂質異常の病態はV型の表現型を呈する高カイロミクロン血症であると判断し,中鎖脂肪酸(medium chain triglyceride;以下,MCTと略)オイルを併用した脂肪制限食を提供した.インスリン治療と相俟ってカイロミクロンの代謝が進み,V→IIb→IV型の脂質パターンに変化したことがリポ蛋白分画精密測定により確認できた.退院後は糖尿病と高中性脂肪血症に対する包括的管理のために一般的な糖尿病食に切り替えた.本症例では急性膵炎の背景にある糖尿病脂血症の病態を詳細に調査することでさらに適切な治療を提供することが出来た.

  • 窪田 友紀, 三松 謙司, 伊藤 祐介, 吹野 信忠, 上原 秀一郎
    原稿種別: 症例報告
    2025 年7 巻1 号 p. 29-35
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/28
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    症例1は74歳女性.幽門狭窄胃がんのため経口摂取不良となり入院した.controlling nutritional status(以下,CONUTと略)スコア7点,プレアルブミン11.8 mg/dLと中等度栄養障害を認め,double elementary diet tube(以下,W-EDTと略)による胃内減圧と経腸栄養(enteral nutrition;以下,ENと略)による術前栄養管理を6日間行った.プレアルブミンは14.6 mg/dLに増加した.腹腔鏡下胃空腸吻合術を施行し,術後合併症なく退院した.症例2は80歳男性.幽門狭窄胃がんの診断で入院した.CONUTスコア5点,プレアルブミン17.2 mg/dLと中等度栄養障害を認め,W-EDTを留置しENによる術前栄養管理を13日間行った.プレアルブミンは21.9 mg/dLに増加した.幽門側胃切除術を施行し,術後乳び瘻を発症したが,脂肪制限食で軽快し退院した.W-EDTは胃内減圧とENを同時に施行でき,幽門狭窄胃がんにおいて栄養状態の改善を見込める有用なデバイスであると考えられた.

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報告記
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