学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
原著
JSPEN所属のリハビリテーションスタッフにおける栄養治療とリハビリテーションに関する意識調査
森 隆志若林 秀隆市川 大輔荒金 英樹助金 淳鈴木 裕也髙橋 理美子田中 舞南里 佑太松嶋 真哉
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2025 年 7 巻 4 号 p. 193-200

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Abstract

【目的】栄養治療の臨床現場においてリハビリテーション(以下,リハと略)スタッフの果たす役割や課題はさらなる深化が必要である.今回,我々は栄養治療領域におけるリハの課題を調査した.

【対象および方法】日本栄養治療学会に所属するリハスタッフにアンケート調査を行った.質問内容は,Nutrition Support Team(以下,NSTと略)での役割と課題,新設された加算への対応,同学会の栄養治療リハビリテーションワーキンググループへの期待である.

【結果】365名が回答した.理学療法士は運動負荷量の調整,作業療法士は食事場面,高次脳機能障害への対応,言語聴覚士は摂食嚥下障害への対応を指向していた.臨床場面の具体的な行動指針がないという意見や,栄養治療やNST活動における行動指針提示やNSTの加算要件への組み入れの希望があった.

【結論】リハスタッフが栄養治療に関わる際の行動指針の作成,活動を遂行する上で必要な制度の整備が必要なことが明らかになった.

Translated Abstract

Purpose: There is a need for further exploration of the roles and tasks of rehabilitation professionals in the clinical setting of nutritional therapy. The purpose of this study is to evaluate knowledge of these roles and tasks through a survey of rehabilitation professionals.

Participants and Methods: A questionnaire survey was conducted among rehabilitation professionals affiliated with the Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition Therapy. The survey asked about the roles and tasks of each person in the clinical setting of a Nutritional Support Team (NST), responses to the newly established additional payment for health care fees in Japan, and expectations for the Nutritional Therapy Rehabilitation Working Group of the Society.

Results: Responses were obtained from 365 rehabilitation professionals. Physical therapists primarily focused on adjusting exercise loads, occupational therapists mainly intervened in eating activities and addressed higher brain dysfunction, and speech-language therapists primarily dealt with dysphagia. Some respondents expressed confusion in clinical practice due to the lack of specific behavioral guidelines. In addition, there was a desire for rehabilitation professionals to be incorporated into the requirements for the NST.

Conclusion: The survey revealed the need to establish behavioral guidelines for rehabilitation professionals involved in nutritional therapy, and to revise the healthcare fee system to support their efforts.

 目的

本邦において栄養治療におけるリハビリテーション(以下,リハと略)の重要性は,2000年代より注目されはじめた.2005年には当時既に我が国の栄養治療をリードしていた日本静脈経腸栄養学会(現 日本栄養治療学会,2024年より名称変更)の学会誌にて近森1)がリハの重要性を報告した.2005年時点では,各施設における栄養サポートチーム(Nutrition Support Team;以下,NSTと略)にリハ職が参画しているケースがみられた2,3)が,日本静脈経腸栄養学会の栄養サポートチーム専門療法士(NST専門療法士)の受験資格は無かった.2010年にリハ職にNST専門療法士の受験資格が認められ,2011年には日本リハビリテーション栄養研究会(現在の一般社団法人日本リハビリテーション栄養学会)が設立された.2010年代に栄養治療におけるリハならびにリハ職の役割を示す総論24)やエビデンスが創出された5,6).2016年には,回復期リハ病棟における積極的なレジスタンストレーニングと栄養補充が骨格筋量と日常生活動作(Activities of Daily Living;以下,ADLと略)を改善させるとのランダム化比較試験による介入効果が示された7)

近年では,リハと栄養の同時介入に加えて口腔管理を行う重要性が示され,診療報酬にも反映された.急性期病院の低栄養高齢患者において,リハ・栄養管理・口腔管理を同時に行うこと,それぞれ単独で行う場合に比し患者ADLや栄養状態がより改善することが示された810).一方,我が国の診療報酬制度における栄養サポートチーム加算においては,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士が配置されていることが望ましいとされているものの加算の必須要件ではない.

「リハビリテーション」の栄養治療における役割の重要性や効果は明らかにされつつあるが,全ての臨床現場でこれらの知識が生かされているわけではない.

日本栄養治療学会(Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition Therapy;以下,JSPENと略)の栄養治療ワーキンググループは,「リハ職の栄養治療への参画の促進」,「リハ職への栄養治療の普及」といったテーマを目的に2024年に設立された.現場での理学療法士,作業療法士,言語聴覚士の行動に具体的な変化が起こるような働きかけとはどのようなものであるか明らかにする必要があると考えた.このため,栄養治療におけるリハ職の意識調査から課題を明確化し,本邦の栄養治療におけるリハ職種の役割を展望することを目的とした.

 対象および方法

栄養治療ワーキンググループにおいてアンケート調査内容を策定した.栄養治療リハビリテーションワーキンググループは,「リハ職の栄養治療への参画の促進」,「リハ職への栄養治療の普及」を通じた栄養治療の発展を目的とし設立された.この目的に従い,リハと栄養に関する重要課題をワーキンググループのメンバーで討議し抽出した.討議の結果,現状の活動を把握する項目として「栄養治療におけるリハ職の関り」と「NST活動におけるリハ職の活動」が挙げられた.また,アンケート開発時点での重要課題として「リハ職におけるGlobal Leadership Initiative on Malnutrition(以下,GLIMと略)基準の活用」と「リハビリテーション・栄養・口腔連携加算」が挙げられた.この2つは令和6年度の診療報酬改定にて,低栄養診断にGLIM基準を用いる方針が示されたこととリハビリテーション・栄養・口腔連携加算が新設されたため現状を把握し今後の展望を示す必要のある重要課題と判断された.これらのテーマをもとにアンケートを作成した.アンケート内容を表1に示す.

表1.アンケートの内容

質問内容 回答方式/選択肢
1 職種を選択して下さい PT/OT/ST
2 経験年数をご記入下さい 記述
3 あなたの主な職場の種類を教えて下さい 病院施設/福祉施設/教育施設/その他
4 栄養治療におけるリハ職種が果たす役割についてあなたのお考えを教えて下さい ・栄養治療においてリハ職種が果たす役割がたくさんあると思う
・栄養治療においてリハ職種が果たす役割は少しあると思う
・栄養治療においてリハ職種が果たす役割はあまりないと思う
・栄養治療においてリハ職種が果たす役割はないと思う
・栄養治療においてリハ職種が果たす役割の有無は分からない
5 JSPENの栄養治療リハビリテーションワーキンググループは,栄養治療におけるリハビリテーションに関する活動をしています.本ワーキンググループに期待することを教えて下さい ・栄養治療においてリハ職種が果たす役割を明確化して欲しい
・栄養治療においてリハ職種が関与することの効果を示して欲しい
・栄養治療においてリハ職種が注意すべき点を示して欲しい
・栄養治療においてリハ職種に期待される将来像を展望して欲しい
・栄養治療おいてリハ職種が他職種とどのような関りを持てばよいか教えて欲しい
・その他
6 NSTとの関りについて教えて下さい.あなたの施設でNSTは稼動していますか はい/いいえ/不明
7 NSTで活動されている方のみお答え下さい.あなたはNST活動等に月1回以上参画していますか はい/いいえ
8 NSTに参加されていない方のみお答え下さい.あなたはNST等にリハ職種として参加する必要性を感じますか はい/いいえ
9 全ての職種の方への質問です.PTが栄養サポートチームに関与する意義につきご意見があれば教えて下さい 記述
10 全ての職種の方への質問です.OTが栄養サポートチームに関与する意義につきご意見があれば教えて下さい 記述
11 全ての職種の方への質問です.STが栄養サポートチームに関与する意義につきご意見があれば教えて下さい 記述
12 リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の準備および実施状況につき教えて下さい ・該当施設ではない
・全病棟で加算を算定している
・一部の病棟で加算の算定している
・加算の請求の準備をしている
・加算の請求を行う予定はない
・その他
13 リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算を請求したいのにできない理由を教えて下さい ・本質問は自分の施設に該当しない
・休日の勤務体制に問題がある
・口腔の評価が困難
・栄養評価が困難
・選任・専従スタッフが現状では出せない
・その他
14 栄養評価におけるGLIMの活用について教えて下さい ・GLIMを活用している
・GLIMを知っている,今後活用したい
・GLIMが分からない,今後学びたい
・GLIMが分からない,活用予定はない
・その他
15 NSTにおいて果たせるPT,OT,STの役割につきあなたのお考えを教えて下さい ・必要栄養量に関する情報の提供
・栄養摂取量に関する情報の提供
・認知機能に関する情報の提供
・身体機能(嚥下機能を含む)とその予後に関する情報の提供
・ADLとその予後に関する情報の提供
・社会的背景に関する情報
・心理状態に関する情報
・その他
16 NSTにおいて果たせるPT,OT,STの役割の明確化につきあなたのお考えを教えて下さい ・果たすべき役割は明確である
・果たすべき役割はおおむね明確である
・果たすべき役割はやや不明確である
・果たすべき役割はかなり不明確である
・果たすべき役割が分からない
17 NSTにおけるリハ職種の役割や今後の課題についてお考えがあれば教えて下さい 記述

アンケートの対象者はJSPENの会員として登録されている理学療法士,作業療法士,言語聴覚士である.2024年4月30日時点での会員数は,理学療法士が536名,作業療法士が163名,言語聴覚士が642名であった11).合計1,341名の母集団に対して許容誤差5%,信頼度95%,回答比率30%と仮定し,必要サンプルサイズは261名と算出した.JSPENの栄養治療リハビリテーションワーキンググループで研究計画を策定してオンラインのアンケートとし,会員にアンケートのURLをメールで通知し回答を促した.調査は2024年8月から9月にかけて実施した.

回答者の職種別の数,回答率,各質問項目の回答数と割合を理学療法士,作業療法士,言語聴覚士の職種ごとに集計した.記述式の回答について回答数の多い内容を集約した.集計と解析にはEZR12,13)を用いた.回答者の職種別の人数,経験年数の平均値,施設の種類ごとの所属の合計を算出した.全員ならびに各職種の回答数とその割合を算出した.記述式の回答は,回答内容をテーマで分類し多く記載されている項目を記載した.これらの解析を元にそれぞれの職種の課題と展望を総括した.すべての職種が関わる項目の考察は栄養治療リハビリテーションワーキンググループの言語聴覚士が作成し,職種別の領域はそれぞれ理学療法士,作業療法士,言語聴覚士により原案が作成された.すべての領域に関して医師3名,理学療法士3名,作業療法士2名,言語聴覚士2名が討議し考察内容を決定した.本研究は,一般社団法人日本栄養治療学会の倫理審審査委員会において承認(2024-001)された研究である.アンケート内において,研究参加への同意の設問を設けて同意を得た.

 結果

回答数は理学療法士166名,作業療法士47名,言語聴覚士152名の合計365名で必要サンプルサイズ261名の139.9%であった.2024年4月30日時点の1,341名(理学療法士536名,作業療法士163名,言語聴覚士642名)を母数と仮定すると回答率は,27.2%であった.経験年数の平均値は,16.1 ± 6.6年(理学療法士15.5 ± 6.9,作業療法士17.0 ± 6.3,言語聴覚士16.6 ± 6.1)であった.病院勤務者は337名(92%),福祉施設13名(3.5%),訪問看護ステーション10名(2.7%),その他5名(1.4%)であった.病院勤務者337名の回答者のうち連携加算の質問項目に該当しないと答えた方が57名だった.各職種の選択式の回答と記述式の回答を主要項目ごとにまとめたものを表2職種ごとのアンケート結果(選択式のみ)と表3記述式の回答の要約に示す.

表2.職種ごとのアンケート結果(選択式のみ)

質問テーマ 回答方式/選択肢 全員(n = 365) PT(n = 166) OT(n = 47) ST(n = 152)
栄養治療におけるリハ職種の役割 たくさんあると思う 306(83.8) 138(83.1) 39(83.0) 129(85.0)
少しあると思う 54(14.8) 26(31.3) 8(17.0) 20(13.2)
あまりないと思う 3(0.8) 2(6.4) 0(0) 1(0.7)
ないと思う 2(0.5) 0(0) 0(0) 2(1.3)
分からない 0(0) 0(0) 0(0) 0(0)
ワーキンググループへの期待 役割を明確化して欲しい 258(70.7) 119(71.7) 33(70.2) 106(69.7)
関与の効果を示して欲しい 258(70.7) 130(78.3) 34(72.3) 94(61.8)
注意すべき点を示して欲しい 212(58.1) 90(54.2) 20(42.6) 102(67.1)
将来像を展望して欲しい 187(51.2) 91(54.8) 22(46.8) 74(48.7)
他職種とどのような関りを持てばよいか教えて欲しい 169(46.3) 75(45.2) 18(38.3) 76(50.0)
その他 1(0.3) 1(0.6) 0(0) 0(0)
NSTの稼動 ・はい 290(79.5) 130(78.3) 41(87.2) 119(78.3)
・いいえ 70(19.2) 34(20.5) 6(12.8) 30(19.7)
・不明 5(1.4) 2(1.2) 0(0) 3(2.0)
NST活動等に月1回以上参加 ・はい 208(57.0) 86(51.8) 26(55.3) 96(63.2)
・いいえ 61(16.7) 32(19.3) 11(23.4) 18(11.8)
NST等にリハ職種として参加する必要性を感じるか ・はい 165(45.2) 85(51.2) 23(48.9) 57(37.5)
・いいえ 4(1.1) 1(0.6) 0(0) 3(2.0)
リハ・栄養・口腔連携体制加算の状況 ・該当施設ではない 57(15.6) 43(25.9) 13(27.7) 1(0.7)
・全病棟で加算を算定している 54(14.8) 7(4.2) 3(6.4) 44(28.9)
・一部の病棟で加算の算定している 69(18.9) 30(18.1) 4(8.5) 35(23.0)
・加算の請求の準備をしている 59(16.2) 25(15.1) 14(29.8) 20(13.2)
・加算の請求を行う予定はない 99(27.1) 52(31.3) 12(25.5) 35(23.0)
・その他 8(2.2) 1(0.6) 1(2.1) 6(3.9)
リハ・栄養・口腔連携体制加算をできない理由 ・本質問は自分の施設に該当しない 126(34.5) 44(26.5) 12(25.5) 70(46.1)
・休日の勤務体制に問題がある 152(41.6) 68(41.0) 23(48.9) 61(40.1)
・口腔の評価が困難 28(7.7) 15(9.0) 3(6.4) 10(6.6)
・栄養評価が困難 20(5.5) 11(6.6) 3(6.4) 6(3.9)
・選任・専従スタッフが現状では出せない 88(24.1) 70(42.7) 15(31.9) 3(2.0)
・その他 17(4.7) 4(2.4) 2(4.3) 11(7.2)
GLIMの活用について ・GLIMを活用している 168(46.0) 74(44.6) 27(57.4) 67(44.1)
・GLIMを知っている,今後活用したい 84(23.0) 70(42.2) 13(27.7) 1(0.7)
・GLIMが分からない,今後学びたい 75(20.5) 13(7.8) 6(12.8) 56(36.8)
・GLIMが分からない,活用予定はない 28(7.7) 6(3.6) 1(2.1) 21(13.8)
・その他 9(2.5) 2(1.2) 0(0) 7(4.6)
NSTにおけるPT,OT,STの役割 ・必要栄養量に関する情報の提供 297(81.4) 122(73.5) 32(68.1) 143(94.1)
・栄養摂取量に関する情報の提供 245(67.1) 93(56.0) 26(55.3) 126(82.9)
・認知機能に関する情報の提供 278(76.2) 112(67.5) 40(85.1) 126(82.9)
・身体機能(嚥下機能を含む)とその・予後に関する情報の提供 292(80.0) 150(90.5) 44(93.6) 98(64.5)
・ADLとその予後に関する情報の提供 292(80.0) 151(91.0) 47(100) 94(61.8)
・社会的背景に関する情報 207(56.7) 97(58.4) 27(57.4) 83(54.6)
・心理状態に関する情報 181(49.6) 77(46.4) 29(61.7) 75(49.3)
・その他 4(1.1) 2(1.2) 0(0) 2(1.3)
NSTにおけるPT,OT,STの役割の明確化 ・役割は明確である 79(21.6) 45(27.1) 8(17.0) 26(17.1)
・役割はおおむね明確である 167(45.8) 67(40.4) 22(46.8) 78(51.3)
・役割はやや不明確である 102(27.9) 47(28.3) 14(29.8) 41(27.0)
・役割はかなり不明確である 14(3.8) 6(3.6) 3(6.4) 5(3.3)
・役割が分からない 3(0.8) 1(0.6) 0(0) 2(1.3)

( )内の数値は,各群の回答者数(全員;365,PT:166,OT;47,ST;152)を分母とした場合の回答数の割合を示す.単位は%.

表3.記述式の回答の要約

5 ワーキンググループへの期待(自由記載部分) ガイドランの作製,卒前・卒後教育の充実,講習会の実施,介入プロセスの提示,ワーキンググループのそのものの広報,レジストリ構築,リハ職以外への啓蒙
老衰・終末期,小児,在宅,急性期,時間栄養学,睡眠に関する指針や知識の提示
9 PTが栄養サポートチームに関与する意義 運動量の評価と調整,栄養と運動の同時評価,姿勢調整,身体機能評価,栄養評価と調整,褥瘡対策,ADLの評価,呼吸器疾患への対応,循環器疾患への対応・サルコペニア/フレイル予防・炎症の考慮
10 OTが栄養サポートチームに関与する意義 食事(姿勢,環境,食具含む),運動量の評価と調整,栄養の評価と調整,ADLの評価,認知機能の評価と対応,上肢機能の評価,QOL・家事,生活とサルコペニアの考慮
11 STが栄養サポートチームに関与する意義 摂食嚥下機能,栄養評価と調整,栄養ルート選定,認知機能の評価と対応,発声発語機能の評価・運動量の評価・呼吸機能の考慮・心理状態・口腔の評価・QOL
17 NSTにおけるリハ職種の役割や今後の課題 リハ職の意義と役割の明確化と栄養治療の普及
NSTではリハ職は必須職種ではないため,加算も算定できないことが問題
NSTの必要性を感じているリハ職以外の職種が少なく活動が難しい
養成校や卒後教育に栄養療法を取り入れる必要がある
栄養学を学んでいないリハスタッフには難しい

栄養治療におけるリハスタッフの役割が多くあると感じている回答者は,83.8%であるが,役割の明確化や関与の効果を必要とする意見も70%程度みられた.NSTの稼働施設は79.5%であるが,月に1回以上参画している回答者は57.0%にとどまった.NSTへの参加の必要性を感じている回答者は45.2%とさらに低かった.リハ・栄養・口腔連携加算の算定は一部でも行っていると答えた回答者は33.7%と約1/3であった.算定したいのにできない理由は,休日の勤務体制の問題が41.6%と最も多かった.GLIMを実際に活用している回答者は,46.0%と半数弱であった.NSTにおけるリハスタッフの役割は必要栄養量(81.4%)・身体機能(嚥下機能含む)(80.0%)・ADLとその予後(80.0%)・認知機能(76.2%)に関する情報の提供が重要視されていた.NSTにおける理学療法士,作業療法士,言語聴覚士の役割の明確化の質問では,おおむね明確との答えが45.8%である一方,やや不明確・かなり不明確との回答が31.7%と約1/3程度みられた.

記述式の回答で頻出した項目を表3に示す.臨床場面の具体的な行動指針がなくとまどいながら臨床を行っているとの意見があり,栄養治療やNST活動における行動指針提示やNSTの加算要件への組み入れの希望があった.ワーキンググループへの期待の項目では,栄養治療やNST活動における行動指針やガイドラインの要望があった.理学療法士の役割の項目では,必要栄養量,身体機能,活動量の評価の他,サルコペニアや循環器疾患,呼吸器疾患への対応の記載があった.作業療法士の役割の項目では,日常生活動作や家事動作などの生活機能や,認知機能の評価などの実生活に即した対応が期待されていた.言語聴覚士の役割の項目では摂食嚥下機能や摂取量や栄養ルートの選定,認知機能への対応が期待されていた.

 考察

JSPEN所属のリハスタッフは栄養治療への参画の意義を感じているが,現場での行動指針の提示や研修機会の充実,診療報酬での制度的な裏付けを必要としていた.ただし,回答者の9割以上が病院に所属しており回答結果は主に病院の医療従事者の意見の影響を受けていると思われた.

回答者の8割以上が栄養治療におけるリハスタッフ参画の意義を感じつつも7割が明確な指針の必要性を感じていた.活動に際してはリハスタッフ自身の栄養治療に関する教育に加え,周囲のスタッフの理解が必要との意見があった.また,NSTに参加し時間を使うことがリハの提供機会のロスやリハビリテーション料の算定数減少につながることからの診療報酬での評価を求める声が認められた.ワーキンググループへの期待にはこれらの要望が反映され,指針の作成,研修の充実や啓蒙活動が挙げられたと考えられた.回答者は病院に所属している経験10年以上の熟練したスタッフが多く,NST稼働施設の所属者が多いと考えられる一方,NSTのない施設や外来・訪問・福祉施設所属の回答者も少数ではあるが存在した.NST加算の要件変更の要望はあるもののリハの実施回数への影響や施設ごとの事情を考慮した制度設計が求められると思われた.

GLIMを活用しているのは3割程度で,リハ栄養口腔連携体制加算を算定しているのは2割程度であった.回答者が栄養療法に興味がある層と仮定すると,日本栄養治療学会所属以外のリハスタッフにおけるGLIM活用とリハ栄養口腔連携体制加算の算定はさらに少ないことが考えられた.

職種別に期待される栄養治療,NSTへの参加の意義について以下に示す.

1. 理学療法士

理学療法士の栄養治療への参画の必要性は十分認識され,必要栄養量の算出と栄養状態に応じた負荷量の調整が期待されていた.リハ栄養におけるリハスタッフの役割として,フレイル,サルコペニア,および悪液質の診断,ならびにそれらのリスクの判定が挙げられ14),理学療法士は筋力や筋肉量,ならびに身体機能を評価することでサルコペニアや悪液質の診断やそのリスク判定が可能である.また,理学療法の中核を担う運動療法は栄養治療と組み合わせることで,患者の機能,活動,参加,および生活の質を最大化できることが示唆されている15).患者のフレイル,サルコペニア,および悪液質のリスクを判定しNSTと共有すること,理学療法に必要な運動量から必要栄養量を算出しNSTと共有することなどを通してリハ栄養の効果を最大化する役割が理学療法士に期待されていると考えられた.

2. 作業療法士

作業療法士は,食事,認知機能,生活における栄養治療への関与が期待されていた.作業療法士には他職種から,認知機能やADL全般,食事動作,自助具の工夫,食事環境など食事そのものに関する役割や生活予後を予測した栄養治療において栄養治療への参画が期待されているものの,作業療法士の多くはQuality of Lifeや環境調整,調理,調理準備に係るADLに関する役割など家事動作,生活上の作業エネルギーの考慮においても参画の必要性を感じていた.アンケート結果には,作業療法士と理学療法士との活動内容の違いがわからないとの回答もあり,作業療法士の専門性についての共通理解が不十分であることが考えられた.今後はNSTにおいて多職種連携が進むよう,作業療法士がNSTで果たす役割を明確化・周知することや,作業療法士がNSTに関わる意義についてのエビデンスの構築が重要と考える.

3. 言語聴覚士

言語聴覚士は,摂食嚥下機能の評価と栄養投与経路や食種に対する助言を行う役割として栄養治療への参画を期待するという意見が最も多かった.また,呼吸,発声,高次脳機能障害等の状態を把握する必要性も指摘されていた.一方で,実際の現場では,管理栄養士の専門とする分野への期待が,言語聴覚士への期待と重なっている部分があった.そのため,まず言語聴覚士自身の専門性を他職種に正確に発信し,支援体制を整えることが,結果的に良質な支援を患者が享受できることに繋がると考えられた.

4. 臨床栄養に関する教育と栄養治療への期待

臨床栄養において理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の養成課程におけるモデル・コアカリキュラム1618)には栄養に関連する項目が記載されているが,その内容は栄養素の基礎的な理解や代謝に関連するもので,臨床栄養における行動指針は示されていない.しかしながら,臨床栄養に関する医療チームにリハ職種が参加した場合に,摂取栄養量の増加,サルコペニアの評価の増加,リハを考慮した栄養治療の実践,合併症の軽減の効果が認められている1922).こうした背景から,本調査ではリハからみた必要栄養量の算出や食事場面の支援・チームでの栄養に関する情報の共有といった臨床栄養における具体的な行動指針のニーズが生じていたと考えた.

本研究には限界がある.本研究の対象者は,日本栄養治療学会の会員であり比較的栄養治療に興味のあるリハ職種であると推察され,リハ職種全体を母集団とはしていない.令和6年のリハビリテーション・栄養・口腔連携加算は急性期病棟が対象であるが,一般病棟か回復期病棟かといった病棟の種別は質問項目に無いため所属病棟ごとの意見の特性は不明である.個人のアンケートであるためNSTの稼働や算定については施設ごとの調査とは異なる結果であることに注意が必要である.

 結論

栄養治療におけるリハとリハ職種(理学療法士,作業療法士,言語聴覚士)に期待される役割や問題点を報告した.臨床における実践方法の提示や人材育成,臨床研究における有用性の検証,NSTの算定要件の見直しを行うことで,効果的な栄養治療の実践につなげていくことが重要と思われた.

 

本論文に関する著者の利益相反なし

引用文献
 
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