電気泳動
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総合論文
可溶性ポリアクリルアミドゲルを用いた新規プロテオミクス戦略
武森 信曉
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2021 年 65 巻 2 号 p. 63-68

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抄録

質量分析を用いるプロテオーム解析において,SDS-PAGEはサンプル前分画ツールとして使用される.SDS-PAGE分離後のゲル内タンパク質はインタクトの状態では回収が困難であり,質量分析に用いるにはゲル内にて酵素消化をおこない,ペプチド断片として回収する必要がある.こうしたゲル内消化は一般に長時間の反応を必要とし,溶液内の消化条件と比べてサンプル損失が生じやすい.本研究ではゲル内消化の問題点を解決するために,N,N'-bis(acryloyl)cystamine (BAC)を架橋剤として調製したポリアクリルアミドゲルに着目した.BAC架橋ゲルは還元処理により容易に溶解するため,タンパク質を損失なく溶液内へ回収できる.著者らのグループはゲル溶解液中のタンパク質を迅速トリプシン消化するための反応条件を最適化し,ハイスループットなサンプル前処理ワークフローであるBAC-DROP(BAC-Gel Dissolution to Digest PAGE-Resolved Objective Proteins)の開発に成功している.本稿では,高深度なプロテオーム解析や,バイオマーカー定量におけるBAC-DROPの活用例を紹介する.

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© 2021 日本電気泳動学会
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