電気泳動
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最新号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
第72回日本電気泳動学会シンポジウム:ワークショップ1
論文種目:総説
  • 木村 弥生, 井野 洋子
    2023 年 67 巻 2 号 p. 47-51
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー

    リン酸化は様々な生物学的プロセスに関与する重要なタンパク質の翻訳後修飾である.リン酸化の状態は,プロテインキナーゼとフォスファターゼの活性を反映しており,細胞内タンパク質の多様性をもたらす.また,リン酸化状態は,タンパク質の立体構造,安定性,他の分子との相互作用を変化させ,タンパク質の機能に影響を与える.そのため,タンパク質のリン酸化状態を解析するための様々な解析戦略が開発されている.ここでは,生命現象に関わるタンパク質のリン酸化に関する情報を得るために,電気泳動と質量分析に基づくリン酸化プロテオミクスの強力な分析ツールを紹介する.これらの分析法を組み合わせることで,プロテオミクス研究の進展を加速させる可能性があると考えている.

論文種目:技術
  • 林 宣宏
    2023 年 67 巻 2 号 p. 53-57
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー

    装置の開発と検体に特化した前処理方法の構築により,社会実装するための,①ハイスループット,②高感度,③高再現性性能を有した二次元電気泳動法を開発した.さらに,二次元電気泳動で得られるデータが機械学習と相性の良い画像であることと,先に開発した手法のハイスループット性能を利用して,敗血症患者血清の二次元電気泳動画像を用いたAIによるプロテオミクス疾病診断にも成功した.機械学習ではデータが増えるほど精度や質(判別できるものの種類)が向上するが,二次元電気泳動装置は原理的に小型化出来て,その実用化によるビッグデータの醸成も可能なので,近い将来,汎用の二次元電気泳動によるプロテオミクスの社会実装が期待される.本稿では,筆者らのこれまでの研究開発の成果を紹介し,AIにより加速するオープンイノベーションに牽引される二次元電気泳動の新たな展開について論説する.

第72回日本電気泳動学会シンポジウム:ワークショップ2
論文種目:総説
  • 兼子 崚, 舟橋 伸昭, 吉村 徹, 山下 太郎, 越川 直彦
    2023 年 67 巻 2 号 p. 59-64
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー

    ラミニン(Lm)-γ2鎖は,Lm-α3,Lm-β3鎖と会合し,細胞外マトリックスタンパク質Lm-332を形成し,細胞接着因子として上皮構造を安定的に維持する役割を担う.一方,Lm-γ2鎖は進行がんの浸潤先進部で単鎖(Lm-γ2m)として発現し,EGF受容体の活性化を介してがん化を促進することが知られている.これまでに,Lm-γ2mが肝細胞がんの診断,発がん予測,遠隔転移を予測する血清バイオマーカーになることを見いだしている.さらに,Lm-γ2鎖をコードするLAMC2遺伝子と核内受容体NR6A1遺伝子が染色体転座により融合した融合遺伝子の翻訳産物(Lm-γ2F)を見いだし,がん化の動力源として役割を明らかとした.本総説では,Lm-γ2mとLm-γ2Fが,がん化促進を制御する分子メカニズムと血清バイオマーカーとしての臨床的有用性について紹介する.

第72回日本電気泳動学会シンポジウム:パネルディスカッション
論文種目:総説
  • 大藤 道衛
    2023 年 67 巻 2 号 p. 65-70
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー

    ゲノム医療の進展に伴い,個人遺伝情報に関わるゲノムリテラシー教育の必要性が高まっている.PCR-電気泳動分析は,ヒトゲノムDNAのバリアントを泳動バンドのプロファイルとして視覚的に観察できることから,遺伝学ならびにゲノムリテラシーの醸成教育に有効な手段である.米国では,バリアント解析実験キットや,安価なPCR装置も教育現場で活用されている.全米科学教育協会(NSTA)では,電気泳動はゲノムを理解するSTEM教育へ向けた教員研修会のテーマの一つとなっている.実験者自身のゲノムDNAを解析することは,ゲノムリテラシー醸成に有効である.我が国では,教育目的でゲノムを扱う実験についても指針の趣旨に準じて取り扱うべきであり適切な運用方法が議論されてきた.今後,電気泳動に対する理解を深め,実験方法や個人遺伝情報の扱いなど教育現場での指導者養成が必要である.

論文種目:一般論文
  • 島崎 洋次, 福家 麗, 徳田 深咲
    2023 年 67 巻 2 号 p. 71-75
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー

    ミクロ非変性2次元電気泳動法(2DE)によるネイティブタンパク質の分離では,両性電解質の配合やアクリルアミドのゲル密度の調整により,分離の最適化が必要である.両性電解質pharmalyte pH 3–10を5%とpH 5–8を1.3%で配合したとき,マウス肝臓由来のソルビトール,乳酸,およびリンゴ酸脱水素酵素の等電点分離が可能となった.また,サイズ分離の際のゲル密度を6.6%にし,リンゴ酸脱水素酵素とカルボキシルエステラーゼ(CE)活性を連続的に調べることで,この2つの酵素が2DE上で異なる位置に分離されていることがわかった.さらに,トランスフェリンとCEの複合体を2DE分離後,リバーシブル染色とCE活性を連続的に調べることで,その複合体が2DE上の同一位置に得られた.以上より,この非変性2DEによるネイティブタンパク質の分離はタンパク質相互作用の解析を行う上での第一歩になると考えられる.

論文種目:総説
  • 梶原 英之
    2023 年 67 巻 2 号 p. 77-80
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー

    電気泳動技術は農学分野でも基礎から応用にかけて広い範囲で日常的に使われている.アガロースゲル電気泳動は遺伝子組換えを含む育種研究,アクリルアミドゲル電気泳動は穀物や食品の分析に使われている.しかし,農学がカバーする領域は非常に広く,扱う材料も作物から家畜までとさまざまである.ここでは他の生命科学分野で頻繁に行われるこれらの電気泳動ではなく,いかにも農学ならではといった特徴的な研究例を紹介したい.重金属を除くための土壌中での電気泳動,地球温暖化に影響する亜酸化窒素の抑制に向けたネィティブ電気泳動,土壌細菌を分析するための電気泳動,電気泳動を使った量的形質遺伝子のマッピング,質量分析を利用した絹の分析,およびキャピラリー電気泳動と質量分析による食品の分析について紹介する.

論文種目:総合論文
  • 井本 真由美, 上硲 俊法
    2023 年 67 巻 2 号 p. 81-85
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー

    免疫グロブリンを測定する検査には,免疫グロブリン定量測定をはじめ血清蛋白分画検査,免疫電気泳動法および免疫固定法がある.これらの検査の中で異常なバンドが検出されたり,乖離したりするデータが出現した時に,異常免疫グロブリンの存在を疑う.異常免疫グロブリンには分子欠損を認めるH鎖病蛋白や半分子型免疫グロブリンが存在し,SDS-PAGEとイムノブロットを駆使して,分子量測定や異常な特性が証明できる.ミクロへテロジェニティを持つBJPも,IFEを利用して,酵素処理前後の検体を電気泳動し,異常バンドが移動することで証明可能である.さらにアガロース膜電気泳動後に,PVDF膜に蛋白を転写し,簡単にイムノブロット法が実施できる.つまり,異常免疫グロブリンの検出も,その解析も電気泳動法が担うこととなる.

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