がん微小環境には細胞外マトリックス(ECM;Extracellular Matrix)が含まれており,ECMはがん細胞アッセイを行う際に用いられている.しかし現行のアッセイ系ではコラーゲンなど単一もしくは特定のECM成分しか用いられておらず,がん細胞の行動特性を評価するアッセイとしては改良の余地がある.細胞の機能を調べるための新しいプラットフォームとして近年注目されている脱細胞化組織をゲル化させ細胞培養に利用することで,よりin vivoに近い条件でがん細胞のアッセイを実施可能であると考えた.脱細胞化ゲル(decellularized tissue gels; DTGs)ががん細胞に与える影響を調べるために,DTGsをコーティングしたプレート上でがん細胞株を培養した.また,DTGsをSDS-PAGEにより分離後,銀染色を行うことで含有タンパク質を調べた.結果,DTGsにはがん細胞の増殖をin vitroで変動させる効果があることが判明した.銀染色では複数のタンパク質バンドが出現したため,DTGsには単一の成分のみではなく,in vivoのように複数の成分からなるECMの含有が期待できる.以上より,DTGsはがん細胞のin vitroアッセイに有用なツールとして検討する価値があるといえる.