2022 年 66 巻 1 号 p. 35-41
リン酸化はシグナル伝達,細胞増殖,細胞運動,遺伝子発現など多くの細胞機能を調節するタンパク質の翻訳後修飾である.これまでにリン酸化の制御と機能を明らかにしようと多くの研究が行われてきた.最近はin vivoのリン酸化部位は質量分析法で同定され,リン酸化の動態はリン酸化部位抗体を用いたウェスタンブロットで調べられている.しかし,そのような方法でも目的とするタンパク質のリン酸化の全体像を把握することは容易ではない.特に複数の部位でリン酸化されている場合には,リン酸化の組み合わせや特定部位のリン酸化の定量は難しい.我々はリン酸化アフィニティーSDS-PAGEであるPhos-tag法を用いて,いくつものタンパク質のリン酸化の解析をしてきた.本稿では,タウとその主要キナーゼであるGSK3βを例にして,in vivoリン酸化解析におけるPhos-tag SDS-PAGEの有用性を示したい.