2023 年 67 巻 1 号 p. 23-27
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤は皮膚T細胞リンパ腫の有効な治療法であるが,単剤では獲得耐性が必発であり,適切な併用療法の開発が求められている.我々は皮膚T細胞リンパ腫の細胞株のキノーム解析により,少数のキナーゼ活性がHDAC阻害剤の刺激により共通して亢進することを明らかにした.同定された分子群の中で,臨床使用可能な薬剤が存在するプロゲステロン受容体に着目して,HDAC阻害剤の併用療法のターゲットとなりうるか検討した.プロゲステロン受容体拮抗薬であるmifepristoneを用いて,romidepsinによる抗腫瘍効果の増強効果についてin vitroで検討したところ,mifepristoneはromidepsinによる細胞増殖抑制効果やアポトーシス誘導効果を増強させた.プロゲステロン受容体はHDAC阻害剤の併用療法のターゲットとなりうる.