2023 年 67 巻 1 号 p. 37-42
非変性条件の2次元電気泳動法と亜鉛染色法により,マウス肝臓の水溶性タンパク質を分離・検出した.pI 5.5/M r 120,000に分離されたスポットがエステラーゼ活性をもつことが,活性染色法と分光蛍光光度法によりわかった.また,このスポットを抗カルボキシルエステラーゼ(ES)抗体や抗トランスフェリン(TF)抗体を結合したプロテインA担体へ電気泳動法により溶出・転写したところ,このスポットのタンパク質はESとTFの複合体であった.この複合体の生理的役割を調べるため,ES単体とESとTFの混合物(ES-TF)にFe2+を加え,エステラーゼ活性の変化を調べた.その結果,ES単体のエステラーゼ活性はFe2+により阻害され,ES-TFではその活性阻害が解除された.以上,本方法によりESとTFの複合体を分離・溶出でき,また,この複合体はFe2+によるエステラーゼ活性の阻害抑制に関与すると考えられる.