2023 年 67 巻 2 号 p. 53-57
装置の開発と検体に特化した前処理方法の構築により,社会実装するための,①ハイスループット,②高感度,③高再現性性能を有した二次元電気泳動法を開発した.さらに,二次元電気泳動で得られるデータが機械学習と相性の良い画像であることと,先に開発した手法のハイスループット性能を利用して,敗血症患者血清の二次元電気泳動画像を用いたAIによるプロテオミクス疾病診断にも成功した.機械学習ではデータが増えるほど精度や質(判別できるものの種類)が向上するが,二次元電気泳動装置は原理的に小型化出来て,その実用化によるビッグデータの醸成も可能なので,近い将来,汎用の二次元電気泳動によるプロテオミクスの社会実装が期待される.本稿では,筆者らのこれまでの研究開発の成果を紹介し,AIにより加速するオープンイノベーションに牽引される二次元電気泳動の新たな展開について論説する.