2023 年 67 巻 2 号 p. 59-64
ラミニン(Lm)-γ2鎖は,Lm-α3,Lm-β3鎖と会合し,細胞外マトリックスタンパク質Lm-332を形成し,細胞接着因子として上皮構造を安定的に維持する役割を担う.一方,Lm-γ2鎖は進行がんの浸潤先進部で単鎖(Lm-γ2m)として発現し,EGF受容体の活性化を介してがん化を促進することが知られている.これまでに,Lm-γ2mが肝細胞がんの診断,発がん予測,遠隔転移を予測する血清バイオマーカーになることを見いだしている.さらに,Lm-γ2鎖をコードするLAMC2遺伝子と核内受容体NR6A1遺伝子が染色体転座により融合した融合遺伝子の翻訳産物(Lm-γ2F)を見いだし,がん化の動力源として役割を明らかとした.本総説では,Lm-γ2mとLm-γ2Fが,がん化促進を制御する分子メカニズムと血清バイオマーカーとしての臨床的有用性について紹介する.