電気泳動技術は農学分野でも基礎から応用にかけて広い範囲で日常的に使われている.アガロースゲル電気泳動は遺伝子組換えを含む育種研究,アクリルアミドゲル電気泳動は穀物や食品の分析に使われている.しかし,農学がカバーする領域は非常に広く,扱う材料も作物から家畜までとさまざまである.ここでは他の生命科学分野で頻繁に行われるこれらの電気泳動ではなく,いかにも農学ならではといった特徴的な研究例を紹介したい.重金属を除くための土壌中での電気泳動,地球温暖化に影響する亜酸化窒素の抑制に向けたネィティブ電気泳動,土壌細菌を分析するための電気泳動,電気泳動を使った量的形質遺伝子のマッピング,質量分析を利用した絹の分析,およびキャピラリー電気泳動と質量分析による食品の分析について紹介する.