2024 年 68 巻 2 号 p. 85-89
液-液相分離によって形成される核内構造体は,様々な細胞機能を制御している.近年,液-液相分離の破綻が神経変性疾患をはじめとする様々な疾患の発症につながることが解明されてきた.我々は,液滴を含む核内構造体の機能を解明するために,抗体を用いたin situビオチン化標識法を確立し,核小体,γH2AX,カハール体などいくつかの核内構造体の構成因子の網羅的解析を行った.さらに,カハール体については,その形成機構を解明するために,構成因子として同定されたタンパク質,ゲノムDNA,RNA間のin silicoによるインタラクトーム解析を行った.その結果,カハール体で転写された新生RNA鎖とRNA結合タンパク質との相互作用が,カハール体形成に重要な役割を果たしている可能性が明らかになった.今後,疾患に関連する核内構造体の形成破綻メカニズムを解明することで,疾患発症機構の解明につながることが期待できる.