日本内分泌学会雑誌
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子宮頸癌のHistogenesisにおける新しい知見
特にEstrogenとの関連において
岡村 靖田中 祥照
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1965 年 41 巻 6 号 p. 724-726,676

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抄録

近年, 子宮頸癌の発生過程として, 扁平上皮化生 (squamous metaplasia), 基底細胞増生 (basal cell hyperplasia), 予備細胞増生 (reserve cell hyperplasia), および, 腺腫様増生 (adenomatous hyperplasia) が重視されて来た.しかし, 最近, Harvard大学のYoungeらは, 次いで, Friedellは “pricklecellhyperplasia” から浸潤癌が生じると報じている.すなわち, normal cell⇔prickle cell hyperplasia⇔prickle cell hyperplasia with parakcratosis or keratosis⇔prickle cell hyperplasia with anaplasia either with orwithout keratinization→上皮内癌→浸潤癌の過程が存在すると考えている.しかし, 彼らの示す組織像はprickle cell hyperplasia with anaplasiaを表わしてはいるが, この異形成性上皮変化が果して癌に移行するか否かは即断し難い.
今井によると, 前癌状態という言葉は, “正確な発癌過程の路線上における必現にして, 且つ, 癌化が約定された, 特定の不可逆状態” に対して用いるべきであるとしている.しかしこの定義を満たす状態を病理形態学的に確認することは仲々困難である.けだし, この経過を動的に把えることが不可能だからである.けれども, ある細胞層から明らかな発癌の進展を示す組織像を認めることが出来たならば, その細胞層からの発癌を示唆すると云える.著者らは, ddN系マウスの子宮頸部に3・4-bcnzpyrcncを塗布し, 同時に種々のホルモンの投与を行ない, 子宮頸癌発生に各種ホルモンがいかなる作用を有するか検索を重ねているが, estradiol投与により, squamo-columnar junction (以降S-GJと略す) に近い扁平上皮領域に著明なprickle cell hyperplasiaを認め, また, prickle cell hyperplasiaからの発癌を示唆する所見を得たので報告する.

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© 一般社団法人 日本内分泌学会
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