沿岸海洋研究
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陸奥湾における貧栄養化と二枚貝養殖の関連性
工藤 勲吉村 真理橋岡 香織足立 敏成磯田 豊
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2014 年 52 巻 1 号 p. 83-92

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抄録

青森県陸奥湾において1980年代以降,栄養塩濃度が30-60%減少する貧栄養化傾向が明らかになった.その原因を解明することを目的として,湾内の栄養塩動態,陸域からの栄養塩供給,外海水との栄養塩交換量,堆積物への除去量を調査した.溶存無機態窒素は,表層30m までは一年を通して枯渇状態にあり,基礎生産が厳しく制限されていることを示唆していた.一方,夏季において底層付近で栄養塩再生による高濃度が観測された.溶存無機態窒素の再生速度を表す硝化活性は,9月においてのみ高い活性を示した.湾外の津軽暖流水との海水交換において,春から秋にかけて湾外水が表層部から流入し,湾内水が下層部から流出する逆エスチュアリー循環が確認された.夏季に流入する湾外表層水は栄養塩が枯渇しており,下層部に存在する高濃度の栄養塩が湾外に流出していることが明らかとなった.また,堆積速度および炭素,窒素,ケイ素の堆積量は,以前と比べてこの30年で数倍に増加していた.これらの結果から1970年代以降湾内で盛んに行われているホタテガイ養殖によって,漁獲による栄養塩の除去,および糞粒の堆積量が増加したことによって,湾内の栄養塩濃度が減少した可能性が示唆された.

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© 2014 日本海洋学会 沿岸海洋研究会
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