沿岸海洋研究
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燧灘東部海域におけるクロロフィル鉛直分布の季節変動
赤井 紀子大山 憲一益井 敏光宮川 昌志
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2017 年 54 巻 2 号 p. 203-213

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抄録

瀬戸内海中央に位置する燧灘東部海域の一次生産構造の特性を明らかにするために,クロロフィル蛍光の鉛直分布につ いて季節変動を調べた.さらに,燧灘の代表定点においてサイズ別(>20μm,8-20μm,<8μm)クロロフィルa (Chl. a)濃度,植物プランクトン出現群および栄養塩濃度を調べた.クロロフィル蛍光については,極大層が4月から6 月および9月(底層極大期)には底層において,7,8月(中層極大期)には中層に観察された.7月以外の成層期には 透明度が高く,有光層が海底まで到達していた.サイズ別Chl. a 濃度は,中層極大期以外において,Chl. a 濃度が高いほど,20μm より大きい画分の占める割合が高くなる傾向が認められた.サイズ別Chl. a 濃度と植物プランクトン出現群および栄養塩類との間に明瞭な関係は認められなかった.燧灘東部海域では,見かけ上の栄養塩濃度は低いが,恵まれた光環境と底層からの溶出や備讃瀬戸からの栄養塩の供給により,一次生産が支えられていると考えられる.

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© 2017 日本海洋学会 沿岸海洋研究会
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