抄録
乱流は,現象そのものは小さいものの,鉛直混合を通じて大規模な海洋変動に影響を与える.これらの鉛直混合は,一
般に海底や海面付近の境界層で大きく,また内部重力波が砕波する密度躍層内でも無視できない.沿岸域や縁辺海域では,これらの層が全体に占める割合が大きく,外洋よりも混合の影響が大きいと考えられる.これらの海域における様々な規模の海洋現象をより正しく理解するには,混合をもたらす物理過程のさらなる理解と,そのより精密な定式化が求められている.本稿では,海底境界層,密度躍層,海洋表層境界層で生じる乱流混合をとりあげ,その力学と,混合の結果として定まる混合層の厚さや鉛直拡散係数について,現状の理解と問題点を整理する.