こころの科学とエピステモロジー
Online ISSN : 2436-2131
研究随想
言語としてのトポロジーについて
トポロジカルに記述された世界の変容
小笠原 義仁
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研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

2022 年 4 巻 1 号 p. 46-63

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抄録
近代科学は、その言語として数学が用いられていることにより特徴付けられる。本報は、数学の中でも特にトポロジーについて、その言語としての可能性を示すものである。具体的には、その基本的な概念について説明された後に、それを言語とすることにより切り拓かれる新たな世界像の可能性を示している。例えば、全てのものが「もの」となり、自己が空虚となり、外的世界も空虚となり、その両者の間には障壁だけが存在するという世界や、逆に一切の「もの」は無くなり、自己と外的世界が最大限に充実して、その両者の境界が無くなるという様な世界の描かれる可能性が示されている。あるいは、外的世界が自分自身にまとわりついて区別することができなくなるという様な世界や、逆に外的世界と自分が、何の曖昧さもなく、これ以上になく明確に区分されているという様な世界の描かれる可能性が示されている。さらには、直感的に明らかと思われる「連続」や「不連続」といった概念が解体されて、その裂け目から覗く新たな認識の可能性が示される。それは、日常言語とは差異のある言語としての数学、特にトポロジーを利用して世界を記述しようとすることにより、逆にトポロジーによって語られる新たな世界の創発である。
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© 心の科学の基礎論研究会
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