日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P1-015
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木本性つる植物におけるシュート間機能分化
*市橋 隆自長嶋 寿江舘野 正樹
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抄録
つる植物は自分の茎で直立できず、成長するために外部の支持を必要とする植物である。多くは支持物獲得のための特殊なシュート(長く伸びて巻き付く、巻きひげや付着根を形成するなど)を作るが、これは一般に葉をあまり発達させずに著しく伸長するという特徴を示す。つる植物のシュート形成に関しては、この伸長成長と支持物獲得の機能に着目した研究は多いが、シュートのもう一つの重要な機能である葉の展開についてはあまり評価されてこなかった。そこで、つる植物が伸長成長と葉の展開をどのように両立させているかを明らかにするため、木本つる植物5種(サルナシ、ツルウメモドキ、マツブサ、ミツバアケビ、イワガラミ)の当年枝解析を行った。
いずれの種でも当年枝の茎長頻度分布は離散的であり、茎長10cmに満たない多数の短いシュートの他に、1mを超えるような長いシュートがごく少数現れた。長いシュートは巻き付く、あるいは付着根を形成するという、支持物獲得のための特殊な性質を示したが、短いシュートはこのような特殊な性質を持たなかった。支持物獲得の機能を持つ長いシュートを「探索枝」、それ以外の短いシュートを「普通枝」と呼んで区別した。探索枝と普通枝とでは、長さそのものに加え、長さあたりの葉面積に差が現れた。即ち探索枝では、普通枝の作り方から予想されるよりも、その長さの割に展開している葉面積がはるかに小さいことがわかった。これは探索枝では普通枝よりも節間が長くなると同時に、個々の葉の面積が小さくなるためであった。さらにシュートの生産性の指標として、シュート重量あたりの葉面積(LAR)を評価すると、探索枝は普通枝の2割から5割という著しく低い値を示した。以上から、探索枝は伸長成長を指向し、普通枝は葉の展開を指向するという性質が明らかになり、つる植物が伸長成長と葉の展開という機能を、シュート間で明瞭に分化させることで両立していることが示唆された。
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© 2004 日本生態学会
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