日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P1-069c
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ヒノキ細根系内の寿命異質性からみた生産・枯死・分解過程
*菱 拓雄武田 博清
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抄録

植物体から供給される枯死有機物の量と質は、土壌の腐食連鎖群集の資源として重要なパラメータである。森林土壌における有機物源としての細根系の重要性は、葉との比較において生産・枯死量から量的に、化学性などから質的にも認められている。従来葉のような、均質な一次細胞系と見なされてきた細根が、近年の研究によって二次成長根を含むこと、根系内の個根寿命、化学性が分枝位置でまったく異なることが示された。これらの細根系内の形態、化学的な違いは、土壌有機物源として量・質的に無視できないと考えられる。本研究ではヒノキを材料とした。ヒノキ細根が原生木部の数によって二次成長する、しないの生活環が異なることを利用し、枯死様式の違う根の生産と枯死が根系生長とどのように対応するかを調査した。連続イングロースコア法により、細根の根端数、根系数の動態、同時に、各原生木部群の根長動態を調べた。根系数、根端数の動態から、根系の状態を侵入(0-4mo.), 分枝(4-7mo.), 維持(7-19mo.), 崩壊(19-24mo.)期に分けることができた。各原生木部群の生産・枯死様式はそれぞれ異なっており、各根系成長段階で特徴的な動態を示した。二次成長した細根は崩壊期に至るまであまり枯死せず根系内に蓄積した。二次成長に至る前に枯死する細根の割合は、全期間合わせて72_%_を占めた。二次成長根の枯死は崩壊期に集中(全期間の76%)した。細根は二次成長によって構造物質の増加と窒素濃度の低下によって分解に抵抗的になる。従って細根系崩壊に至るまで二次成長根を維持しながら、先端近くの一次根で生産、枯死を繰り返す細根動態は、根系全体の枯死が生じるよりも細根、土壌間の物質循環を速めると考えられる。発表では一次根、二次根の分解率を合わせて求め、形態、化学的に異なる根の死に方が土壌への有機物供給に与える影響を考察するつもりだ。

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© 2004 日本生態学会
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