日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P1-070c
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中央シベリア永久凍土帯に成立するカラマツ林の土壌中窒素動態 
*近藤 千眞徳地 直子
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抄録

温暖化等の環境変化が北方森林生態系内の物質循環に影響を与える可能性が指摘されている。そのため、北方森林生態系に関する情報を得ることは急務である。本研究では、多くの森林生態系において植物の成長の制限要因であると言われている土壌中無機態窒素の動態を把握することで、北方森林生態系内の物質循環に関する情報を得ることを目的とした。

本研究の調査地はロシア共和国クラスノヤルスク地方Tura(64°19′N 100°13′E:年平均気温:-9.2℃、年平均降水量:322mm)である。約100年生のカラマツ林内(220×300m)に、12プロット(15×15m)設置し、各プロットに土壌断面を2つ作成し、各断面のA0層、0-10cm層の2深度で調査を行った。

調査項目は現存量、窒素無機化速度、移動量で、現存量は2002年9月と2003年9月に採取した生土から測定し、窒素無機化速度は現地培養(Buried Bag法)と実験室培養で求めた。移動量はイオン交換樹脂(IER)法を用いて測定した。以下単位は全てkgN/ha/yrである。

A0層の無機態窒素現存量は一年間で2.7増加した。0-10cm層では有意な増減はなかった。なお、現地培養では、A0層での無機態窒素の生成はみられなかったが、0-10cm層での生成量は7.1であった。実験室培養でも同様の傾向が見られた。
IERへの吸着量は、A0層1.5、0-10cm層1.1であった。

以上の結果と、林外雨、渓流水の窒素含有量(2.1,<0.1;Tokuchi et al. 2003)から、可給態窒素量を推定した。その結果、各層位の可給態窒素量はA0層-2.1、0-10cm層7.5、10cm以下1.0となり、合計は6.4と推定された。

今回得られた可給態窒素量6.4はカラマツの年間窒素要求量6.8(Kajimoto et al. 1999; 石井 2004より推定)と、ほぼ同量であるが、林床植生の窒素要求量を考慮すると、本調査地では可給態窒素が不足している可能性が示唆された。

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© 2004 日本生態学会
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