日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P2-020c
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アライグマとタヌキの資源利用特性の比較
*岡部 史恵揚妻 直樹
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抄録

日本には様々な移入動物が生息しており、在来種に与える影響が懸念されている。ここでとりあげるアライグマ(Plocyon lotor)も日本に移入された動物であり、ニッチが近いとされるタヌキ(Nyctereutes procynoides)と競争が生じ、これを排除してしまう危険性が指摘されている。この2種間の競合の程度や排除の可能性を検証するには、それぞれの資源利用特性を明らかにしておく必要がある。そこで、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター苫小牧研究林において、同所的に生息するアライグマとタヌキの資源利用特性を明らかにし、両種の関係について検討した。調査地に約800mの間隔で8列5行のグリットを設け、その40ヶ所の交点に調査プロットを設定した。2003年6月から11月にかけて、各プロットに赤外線反応式の自動カメラを設置し、その撮影率から両種の土地利用頻度を求めた。また、各プロットに20m×20mのコドラードを設け、ミクロスケールの環境要因として、昆虫類・果実・水場・森林構造などを調べた。さらに、プロットの中心から400m以内に含まれる林相をマクロスケールの環境要因とした。
両種の土地利用頻度と環境要因の関係から、アライグマとタヌキの環境選択性は全般的に似てはいるものの、広葉樹林・針葉樹林・下層植生構造などに対する選好性に違いがみられた。また,タヌキはアライグマに比べて昼間の活動性が高いこともわかった。アライグマとタヌキでは選好・忌避する環境要因や活動時間帯が異なっていたことから、本調査地では両種間の競争はある程度回避されていると考えられる。しかし、自然界における動物の種間関係は固定的なものではなく、人為的な攪乱などによって変動しうるものである。従って、両種の関係については、人間活動の影響も考慮しながら、慎重に検討していかなくてはならない。

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© 2004 日本生態学会
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