日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P2-021c
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ヨツモンマメゾウムシの地理的系統内で生じた競争様式と生活史形質の変異
*真野 浩行徳永 幸彦
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抄録

分断化された資源を利用する生物個体群では、それぞれの資源をめぐる個体間の局所的な競争が、個体群全体の動態や生活史形質の進化に対して重要な役割を果たす。ヨツモンマメゾウムシは、豆を資源として利用し、貯穀害虫として知られている生物である。幼虫期間中に豆の内部で生活するため、個々の豆で局所的な競争が生じる。局所的な幼虫間の競争結果は、Nicholsonの競争様式の分類に基づいて、勝ち抜き型と共倒れ型競争に分類される。ヨツモンマメゾウムシの幼虫は、豆内の種内競争において、地理的系統間で異なる競争様式を示すことが知られている。また、これらの競争様式は、線形の遺伝様式によって決定していることが報告されている。
  今回、C-valueを指標にして、ヨツモンマメゾウムシのニュージーランド系統から、人為的選択や飼育環境の違いにより作成された集団ごとに、幼虫が異なる競争様式を示すことを報告する。勝ち抜き型競争を示すC-valueの高い系統、共倒れ型競争を示すC-valueの低い系統という2極化を示した地理的系統間の変異と比較すると、ニュージーランド系統内では、C-valueの極端に高い値、低い値を示す集団だけでなく、中間の値を示す集団が存在した。また、発育日数や体サイズ、産卵数においても異なる集団間で変異が確認された。ヨツモンマメゾウムシの地理的系統の調査では、C-valueと、成虫の体サイズとの正の相関が示されており、競争様式と、生活史形質との関係が注目された。そこで、異なるC-valueの値を示すニュージーランド系統由来の集団を用いて、C-valueと、羽化日数や体サイズ、産卵数などの生活史形質との関係を実験的に調査を行った。この結果に基づいて、ヨツモンマメゾウムシにおける幼虫の競争様式と生活史形質の関係を議論する。

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© 2004 日本生態学会
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