抄録
森林生態系では多種の樹木が
複雑な構造をつくりだしている。
森林の構造において特徴的な点の一つとして、
垂直方向の階層性が発達している点が挙げられる。
階層構造は、
多種共存機構の要因の一つであることが
森林構造仮説(Kohyama 1993)として
提唱されるなど、
興味深い問題の一つである。
本発表では、
発表者らが開発した樹木モデルの一つである
Cubic Module Modelを用いて
森林の階層構造に関するシミュレーションを行った。
Cubic Module Modelは
立方体をモジュール(繰り返し単位)とする
仮想植物を用いたモデルシミュレーションである。
仮想植物は葉キューブと枝キューブの2種類のキューブによって構成される。
これらのキューブのうち、
葉キューブのみが光合成を行なう。
仮想植物は新たな葉キューブを生産することで成長するが、
葉キューブは一定時間経過後に枝キューブに変化する。
仮想植物は上方からの光を用いて光合成を行ない、
この総量から呼吸量を減じた剰余の光合成産物を、
新たなキューブの生産および繁殖に投資する。
繁殖の際に親は子に対し
キューブ生産の順序と位置の情報を伝達し、
子は完全にこれに従ってキューブを生産し成長する。
伝達の際に一定の確率で情報に誤りが生じる。
光合成能が単一の仮想植物によるシミュレーションを行ったところ、
森林群落には一つの林冠層のみが形成され、
階層性が発達しないことが示された。
この傾向は、純光合成能が変化しても見られた。
二種類の光合成能をもつ仮想植物によるシミュレーションを行ったが、
光合成能の違いのみでは
これら二種は共存し得なかった。
これらの結果をもとに、
森林の階層構造について
議論を行う。