日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: P3-017
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トビイロシワアリが巣に運び込むコニシキソウ種子は食料ではない?
*大西 義浩西森 大樹鈴木 信彦片山 昇寺西 眞
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抄録
アリによる種子散布の研究では、種子にエライオソームをつける典型的なアリ散布植物を扱ったものが多く、エライオソームをつけない種子をアリが運搬する収穫アリ型種子散布についてはあまり研究されていない。植物が食害等の損失を伴う収穫アリ型種子散布では、巣内への種子搬入、巣外への種子搬出、種子の食害率などの散布者の行動特性が特に重要になってくると思われるが、これらの行動に注目した研究はほとんど行われてきていない。本研究では、トビイロシワアリによるコニシキソウ種子の運搬行動を調査し、トビイロシワアリにとってのコニシキソウ種子の運搬行動の意義を考察した。
 収穫アリ型種子散布では一般に、アリに運搬された種子の大部分は食害され、無傷で発芽が可能な種子はほとんど残らない。しかし、トビイロシワアリはコニシキソウの種子を巣内に搬入したが、搬入した種子の約半数を再び巣外に搬出した。巣内に残っていた種子は食害されておらず、巣外に搬出された種子の食害率も低かった(約10_%_)。飢餓状態のトビイロシワアリならば種子を食害するかもしれないので、絶食が種子の運命におよぼす影響を調べてみたが、飢餓状態でもほとんど種子を食害しなかった。さらに、コニシキソウ種子と典型的な食料としていたアワの種子に対するトビイロシワアリの行動を比較した。その結果、巣内に搬入されたアワの種子は巣外に搬出されることはなく、幼虫がいる場所の近辺に置かれる傾向が見られ、ほぼすべてが食害されていた。それに対してコニシキソウの種子では、搬入された種子の約半数が巣外へ再び搬出され、巣内に残った種子が置かれる場所に特定の傾向はなく、食害率も低かった。
 これらの実験結果より、トビイロシワアリはコニシキソウ種子を運搬するが、食料とみなしていない可能性が示唆され、結果的にトビイロシワアリは他の収穫アリ型種子散布より効率良くコニシキソウ種子を散布していると考えられた。
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© 2004 日本生態学会
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