日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: O1-V24
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スバールバル諸島ニーオルスン氷河後退域における土壌と植生の発達
*大塚 俊之内田 雅己吉竹 晋平中坪 孝之
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抄録

  スバールバル諸島・ニーオールスンには、氷河後退域のツンドラ生態系が広がっており、氷河後退時期や微地形などの違いにより植生のモザイク状分布が認められる。生態系機能は植生タイプと密接に関係しており、ツンドラ生態系の広域的な炭素固定機能評価の第一段階として、一次遷移に伴う土壌の発達プロセスと植生構造との関係を明らかにすることを目的とした。
  2003年の8月に東ブレッガー氷河の先端から海岸まで約3kmのライントランセクトを5本設定し、各トランセクト上に200m間隔で調査プロット(各4m2) を設置した。各プロットにおいて、植生調査として藻類の被度と、コケ・地衣植物及び維管束植物のリストと被度、土壌調査として地表面の礫被度、動物の糞被度、土壌深度、土壌水分量、pHの測定を行った。さらに各調査プロットの複数の地点で深さ別の土壌サンプリングを行い土壌中の全炭素量と全窒素量を測定した。
 調査を行った全64プロットにおいて維管束植物は43種出現した。維管束植物の出現しない場所を除いた51プロットの組成からTWINSPANにより植生タイプを区分した結果、Salix polarisOxilia digynaを指標種として、両種が出現しないプロット(氾濫源と若い氷河後退域)と両種の出現するプロット(古い氷河後退域)の大きく二つのグループに分けられた。一次遷移の初期段階である、前者のグループでは礫被度は80%以上で、土壌深度は浅くpHは8以上のアルカリ性を示した。このグループのプロットでは植物の被度は極端に少ないが、コケや地衣類とほぼ同時に一次遷移のごく初期段階から維管束植物のSaxifraga oppositifolia が侵入することが確認された。一次遷移が進行した後者のグループでは土壌深度は10cmを超える場合もあり、pHもほぼ中性であった。このグループのプロットでは維管束植物のSalix polarisとコケ植物のSanionia uncinataが優占する群落が広がっているが、地形的要因によって、Dryas octopetala群落などのいくつかの植生タイプが区分された。

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© 2004 日本生態学会
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