日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: O1-V25
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風食による植被の破壊がもたらす強風地植物群落の種の多様性_-_飯豊山地の偽高山帯における事例
*小泉 武栄
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抄録

 東北地方南部に位置する飯豊山地は、海抜2100mをわずかに越す程度の山地だが、残雪と高山植物に恵まれ、本邦屈指の広大な偽高山帯の草原が展開している。この山地では主稜線に沿うところどころで、強風によって植被や土壌の一部が縞状に削り取られ、地表に細長い裸地や溝ができているのが観察できる。筆者は北股岳の南東斜面を事例として、縞状の裸地とその周辺の植生調査を行い、風食が強風地の植物群落に種の多様性をもたらす役割を果たしていることを見出した。裸地は最初無植生だが、ソリフラクションなどの働きで礫が集積し、安定化すると、ミヤマウシノケグサやホソバコゴメグサなどの先駆植物が侵入する。それに続いてチシマギキョウやミヤマウスユキソウなどが混生し、さらにハクサンイチゲやコタヌキランが加わるなど、遷移の進行に伴って植物の種類は急速に増加する。これに対し、強風地で広い面積を占め、極相に達していると考えられるイネ科の草本を主体とする風衝草原では、植物の種類は大幅に減少してしまう。このことから風食による植被の破壊が、強風地の豊かな植物相の維持に大きな役割を果たしていると考える。

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© 2004 日本生態学会
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