日本生態学会大会講演要旨集
第51回日本生態学会大会 釧路大会
セッションID: O1-W08
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形態的にスズメガ媒に特化したサギソウ(ラン科)におけるアザミウマの種子生産への貢献
*茂田 幸嗣井鷺 裕司中越 信和
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抄録
形態的に適応関係が確認される植物と送粉昆虫に関しては数多く研究が行われている.近年になり,形態的な適応関係が見られない送粉昆虫が植物の繁殖に高く貢献している事例の報告があり,その役割に注目が集されている.本研究ではサギソウ(Habenaria radiata; ラン科)において,適応対象の送粉者(スズメガ)と非適応対象の送粉者(アザミウマ)の種子生産への貢献度を,送粉実験により明らかにする.サギソウは細長い距により長い口吻を持つスズメガに適応している.スズメガはガ類の中で口吻の長さが特に長く,ホバリング飛行し,飛翔能力が最も高いグループである.アザミウマは体長1-2mm程度の小さな昆虫で,花粉や蜜,花弁などを餌とする.様々な植物の送粉を行うジェネラリストの送粉昆虫として知られている.
夜の訪花昆虫の観察ではスズメガの訪花が確認され,昼の観察ではアザミウマの訪花が確認された.サギソウの距の長さとサギソウを訪花したスズメガの口吻の長さはほぼ一致し,両者の緊密な適応関係が示された.
受粉実験では6つの実験を行った.その内の3つは,I メッシュの袋を被せてスズメガを排除.アザミウマが送粉.II 放置.スズメガとアザミウマが送粉.III 紙の袋を被せて両者を排除.
それぞれにおいて結朔率と結実率を求め,両者をかけ合わせたものを種子生産指数とし,送粉昆虫の種子生産への貢献度を次のように求めた.
スズメガの貢献度:[(種子生産指数 II - 種子生産指数 I)/ 種子生産指数 II ]x 100 = 72%
アザミウマの貢献度:[(種子生産指数 I - 種子生産指数 III)/ 種子生産指数 II ]x 100 = 26%
スズメガと長い距を持つランの緊密な送粉共生は,共進化の有名な例である.そのような共生関係を確立した植物において,アザミウマのようなジェネラリストタイプの送粉昆虫が全種子生産の1/4に貢献しているということは驚くべき事実である.
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© 2004 日本生態学会
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