日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: C104
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性特異的分散に対する多回交尾と精子優先の影響
*廣田 忠雄
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抄録

 性特異的な分散は、多くの分類群で観察されている。その進化要因についてHirota(2004)は、メスが分散前に交尾する場合、変動環境下ではメス特異的な分散が進化しやすいことを証明した(J. Anim. Ecol. 73:1115-1120)。これは、メスはリスク分散のために複数の生息地で繁殖せねばならないが、オスは交尾相手が自分の子孫を複数の生息地で産んでくれるので、自ら分散する必要がないために生じる現象だった。ただし、この効果はメスが分散後に再交尾する場合には働きにくいことが予想される。そこで、メスが2回交尾する場合を仮定して新たな解析を行った。 メスが分散直後に再交尾する場合、最初に交尾したオスの精子が使われる割合が減少する。そのため、オスも自ら分散して、複数の生息地で交尾する必要性が生じる。しかし鱗翅目などでは、再交尾のタイミングは必ずしも分散と一致していない。そこで、再交尾のタイミングが分散と一致している条件と、分散とは独立している条件の2つを試した。 また、Last-male sperm precedence(LMSP)が生じている場合にも、最初に交尾したスの精子が分散後に使われる割合が減少するので、分散前交尾によって分散にそれほど大きな性差が生じなさそうである。しかし、種によってはRandom fertilization(RM)が生じていると見なせるものもいる。そこで、LMSPとRMの2つの条件を試した。 結果、高い交尾によってメス特異的な分散を抑制されるものの、再交尾が分散と連動していない場合や、RMの場合には、中程度の性差は進化した。そのため、メスが多回交尾する場合でも、条件次第では、分散前交尾によってメス特異的な分散が促されることが分かった。

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© 2005 日本生態学会
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