抄録
アサギマダラParantica sitaは東アジアに分布する大型のマダラチョウである。1980年頃から始められたマーキング調査によって、長距離の移動をすることがわかってきた。演者はアサギマダラの移動調査ネットワーク「アサギネット」を通じて、1997年以降、アサギマダラの移動調査に関わってきた。日本各地や台湾の多くの方々の努力によって、台湾と本州・九州相互間の移動が確認されるなど、アサギマダラが2000kmを越える長距離移動をすることは確実になった。しかし、主要な越冬地は台湾かそれ以南の地域であろうと推定はされているものの、まだ特定には至っていない。また、日本国内における冬のアサギマダラの生活についてもまだ不明な点が多いし、春の北上についてはごく少数の移動例しか確認されていない。これに対し、アサギマダラの夏から秋にかけての動態については、非常に多くの標識・再捕獲記録が報告されており、アサギマダラの南下の概要はほぼわかってきたと言える。今回は、夏から秋に報告されている標識・再捕獲・移動データのうち、1地点で多数の個体のマーキングが行われている福島・群馬・長野・愛知・三重・滋賀・和歌山・高知・鹿児島などのデータを解析した結果に基づいて、日本におけるアサギマダラがの夏_から_晩秋にかけての動態について考察する。また、アサギマダラの調査において成功しているインターネットの利用例についても紹介する。