抄録
四国の吉野川下流域では,周年にわたって魚食性の猛禽であるミサゴがみられる.1998年から2000年にかけて,河口から上流へ30kmまでの区間の,河川沿いあるいは周辺の見晴らしのよい38地点に調査員を配置し,ミサゴの行動調査および繁殖調査をおこなった.4月から8月にかけての繁殖期に周辺の山林を探索したところ,1999年には4つがい4巣,2000年には6つがい6巣を発見できたが,1999年の巣のすべてが2000年も使用された.巣間距離は近いもので400m以下,多くが4km以下に存在し,調査地域のなかでは比較的集中する傾向がみられた.一方,採餌については,吉野川流域には旧吉野川やため池などの比較的小さな水域も存在するが,ミサゴの探餌行動は吉野川本川に集中していた.また,1999年の4巣のつがいの採餌場所を巣から連続追跡した結果,餌場はつがい間でほとんど重複しており,河口から15kmに位置する第十堰の直下流に集中していた.この第十堰直下流への集中傾向は採餌行動を示したすべてのミサゴのデータからも明らかであった.また,非繁殖期については,第十堰直下流と河口周辺が狩りの集中地域となっていた.河口堰である第十堰は魚類の遡上が十分に保障される構造になっておらず,堰直下流に遡上できない魚類が滞留している可能性があり,このことが,ミサゴの餌場の集中の原因であると推測される.本研究の実施に際しご協力をいただいた,国土交通省徳島河川国道事務所に感謝する.