抄録
森林炭素循環に関する最も重要なプロセス、すなわち光合成を明解するため、24チャンネル自動開閉チャンバー式光合成自動測定システムを開発した。従来用いられている光合成測定システムと比較して、本システムは枝に設置するチャンバーが常時開いていることから葉に影響を与えず、風雨に関係なく枝レベルの光合成・呼吸の自動連続測定が可能であるなどの特徴がある。苫小牧のカラマツ林に、樹木別、樹冠高度別など多地点にチャンバーを設置し、2003年8月上旬から枝レベルの光合成・呼吸速度の自動連続測定を開始した。24個あるチャンバーのうち測定中のチャンバー(1個)に対しては中の空気を循環させながらCO2アナライザへ送り、測定していないチャンバーに対しては外気を通過されてチャンバー内の環境を外の環境に近づける。各チャンバーの測定時間は150秒に設定し、24個のチャンバーの測定周期は1時間である。夏における林冠部の最大光合成速度は4.5 ± 1.2 µmol m-2 s-1であり、量子収率は0.021であった。または光強度が強いほど光合成速度が高く、光合成速度の日中低下という現象は見られなかった。この結果は微気象学的によるCO2フラックスの観測結果と一致しており、開発したチャンバーは樹木の生理に影響を与えていないことが示唆された。一方、夜間における葉の呼吸速度は0.6 ± 0.4 µmol m-2 s-1であり、呼吸は葉温と指数関係を示し、温度反応係数QCO10 は7.5であった。また、本研究によって得られる高精度・高分解能の光合成データにより、生態系炭素循環モデルの推定精度向上が期待できる。