日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: B204
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ボルネオ熱帯低地林における訪花性ハムシ類の長期個体数変動
*岸本 圭子市岡 孝朗加藤 真酒井 章子百瀬 邦泰永光 輝義山根 正気Hamid Abang Abdul井上 民二
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抄録

東南アジア島嶼部では、一斉開花(群集規模で生じる多数の樹種の開花期の同調)が数年間隔で不規則に生じる。本研究の調査地、ボルネオ島ランビル国立公園(以下、ランビル)でも、フタバガキ科を初めとした多くの樹種が断続的に開花するのが観察された。開花期には花粉や花弁などを利用する様々な昆虫を花上で確認することができる。このように不規則で予測性の低い頻度で生じる資源量の変化に対して、訪花性の昆虫がどのように反応するのかは興味深い問題である。フタバガキ科のなかでも種数が多いサラノキ属(Shorea)は多くの樹種が一斉開花に同調する。これまでの研究から、マレ−半島ではサラノキ属数種はアザミウマによって送粉されることがわかっている。ランビルにおける一斉開花期の訪花性昆虫調査によって、ランビルではハムシがそれらのサラノキ属数種に訪花することが明らかにされた。マレー半島のアザミウマでは発育期間が短かく、一斉開花に対応して急激に個体数を増やし、非開花期には他の植物の花に依存することが既に判明している。では、ランビルで観測された訪花性ハムシ類は、一斉開花のような急激な資源量の増加に対してどのように反応するのか?これを明らかにするために、演者らは長期間にわたっておこなわれた灯火採集によって集めたハムシを用い、訪花性ハムシを中心にハムシ科数種の長期的な個体数変動の把握を試みた。その結果、訪花性ハムシ数種では非開花期においても出現が確認され、さらに、そのうち数種が一斉開花に同調しない樹種の花上やサラノキ属の新葉上で観察された。これらにより、そうしたハムシは非一斉開花期においてはそれと無関係に咲く花や新葉などを利用し個体群を維持していると考えられた。

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© 2005 日本生態学会
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