日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: D208
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九州・阿蘇地域における草原の現状と維持・再生に向けた取り組みの効果
*小路 敦山本 嘉人平野 清中西 雄二
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キーワード: 草原, 阿蘇, 放牧, 火入れ, 自然再生
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抄録

 九州・阿蘇地域では、牧野を利用した畜産の担い手不足等により、古来より維持されてきた草原の植生や地域特有の景観が失われつつある。1905年から1995年にかけての90年間で、阿蘇郡内の草原面積は、約70,000 haから約36,000 haへとほぼ半減した。演者らは、阿蘇地域における草原景観および植生を保全するため、様々な取り組みを実施している((2)および(3)は「阿蘇地域自然再生推進計画調査」の一環として実施。)。(1)利用休止された半自然草原への放牧再開試験 阿蘇・北外輪における利用休止されたススキ型草原に褐毛和種牛を放牧し、植生変遷を5年間追跡した。草本植物の地上部現存量が急速に減少し、植物の出現種数が増大した。一方、木本種の増大を完全に抑制することはできなかった。(2)「モーモー輪地」における植生変遷 牛を重放牧して草量を減少させる「モーモー輪地切り」が、省力的な防火帯創出法として注目されている。実証試験地において刈り取りおよび植生調査を実施した結果、放牧圧の高い試験区においては乾物草量が約200g/m2に抑制され高い防火帯効果が期待されたとともに、植物の出現種数が増大した。(3)「草原内に孤立する不要植林地除去試験地」における植生変遷 草原内に孤立する植林地の存在は、防火帯づくりの距離を増大させるため、草原への火入れを実施する際の労力が極端に増大する。環境省では、管理されていない孤立植林地を試験的に伐採する事業を実施した。伐採後の植生を追跡した結果、ススキをはじめとするイネ科草本植物がすみやかに定着しているものの、灌木類等木本植物の優占度も高まっており、森林の前駆植生とススキ型草原との両面を併せ持つ植生になってきている。植生をススキ型草原に仕向けるためには、火入れの際に灌木類を確実に焼く工夫が不可欠である。

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