日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-008
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スギとヒノキの窒素利用様式が種子生産の年変動に及ぼす影響
*稲垣 善之倉本 惠生酒井 敦川崎 達郎
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キーワード: スギ, ヒノキ, 窒素, 種子, 年変動
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抄録

樹木の種子生産は年変動を示す。窒素は種子を生産するために必要な養分物質であり,樹木の窒素利用様式が種子生産の年変動に影響を及ぼすことが予想される。本研究では高知市にある森林総合研究所四国支所構内の1960年に植栽されたヒノキ・スギ人工林において,1991年7月から2003年6月まで13年間にわたってリターフォールを採取し,種子生産量の年変動を明らかにした。また,落葉の窒素濃度から窒素利用様式の年変動を明らかにし,種子生産に樹木の窒素利用様式が及ぼす影響を検討した。観測期間のヒノキ・スギの種子生産量はそれぞれ1.5 - 26.5 g m-2,1.1 - 10.5 g m-2であり,それぞれ18,9倍の年変動を示した。スギとヒノキの種子生産量はほぼ同じような2年周期の変動を示し,1995,99,2001年に多く,偶数年では少なかった。種子の窒素濃度は種子生産量と同様に2年周期で変動し,種子生産の多い年に高く,種子生産の少ない年に低かった。したがって,種子生産に投資された窒素資源が多いほど,窒素濃度の高い質のよい種子を多く生産すると考えられた。1992年から2年ごとに区切った6期間における落葉の窒素濃度と種子生産量にはスギとヒノキのどちらでも有意な負の相関関係がみられ,落葉の窒素濃度が低いほど種子生産が多い傾向を示した。落葉の窒素濃度が低いほど,落葉前に引き戻しによって多くの窒素が樹体内に転流されると考えられる。この場合,転流によって引き戻した窒素資源を種子生産に配分することが可能になると考えられた。

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© 2005 日本生態学会
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