日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-009
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密閉型チャンバーを用いた土壌CO2放出速度の時空間変動の解析
*石川 真一町田 由利香
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抄録

玉原高原ブナ林(標高1300m)と群馬大学構内アカマツ・クヌギ・コナラ混交林(標高130m)において、土壌CO放出速度を測定した。測定は、Vaisala社の携帯型拡散式CO計(GM70)を装備した密閉型土壌呼吸チャンバーを用いて行った。GM70は分解能が10ppmとやや粗いが、このチャンバーを用いることによって、5分から15分(データは15秒間隔で自動記録される)で1地点の測定を行うことができた。各調査森林においてそれぞれ20地点を固定して、月に一度、日中の約3時間以内に測定を完了した。各調査森林で月ごとに平均すると、群馬大学構内混交林においては、土壌CO放出速度は5・6月に最も高く(1.4 g m-2 hr-1)、12月に最も低く(0.2)なった。玉原高原ブナ林においては、7月から8月に最も高く(2.1)、積雪の残る4月に最も低く(0.2)なり、ついで11月に低く(0.4)なった。地温と土壌CO放出速度の間には、両調査森林いずれにおいても、有意な正の相関がみられた。土壌含水率と土壌CO放出速度の間には、群馬大学構内混交林において有意な正の相関がみられ、玉原高原ブナ林では弱い負の相関がみられた。玉原高原ブナ林では、土壌含水率が高い季節には地温が低かったため、この負の相関はみかけ上のものであると考えられる。一方、土壌CO放出速度に地温や土壌含水率では説明できない地点間差異が生ずることもあり、モグラの穴の有無やリターの厚さの差異など、生物学的要因の関与が示唆された。Vaisala社が今年発売する分解能5ppmのCO計(GMP343)を用いれば、さらに精緻な解析を行うことができるようになる。

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© 2005 日本生態学会
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